ラー油を入れる理由はわかったのか?

飽きずに食べるために俺たちは考えた
ところが。最初は「うまい、うまい」と勢いよく食べていたが、蕎麦を半分くらい食べたところで、つけ汁の濃さが積み重なり、正直言って、ちょっと飽きてきた。しょっぱい。隣を見ると、良太も少しペースダウンしているようだ。蕎麦量が多すぎたか。
良太:入り口に蕎麦湯があったけど…….。あれは食べ終わってから入れるもんだよね。さっき、向こうのおじさんがつけ汁に生卵を割って入れていたから、試してみない?
周:俺、ダブル卵になっちゃうよ。でも、「すき焼き」みたいに卵をつけて食べるとマイルドになるかも。
というわけで、ボクらはつけ汁に生卵を入れてかき混ぜた。これが大成功!
良太:尖っていた味が、まろやかになったね。
周:うん、少し、しょっぱくなくなった。ただ、もう少し、薄めたいから、オレ、蕎麦湯を入れてくるよ。

つけ汁の丼を持って席を立ち、入り口に行くと、良太の言う通り、蕎麦湯の鍋が置いてあった。張り紙には「魚粉を蕎麦湯に一振りどうぞ。」と書いてあった。おたまで2杯の蕎麦湯を入れ、魚粉を一振り。こっそり、二振り、三振り。四振り。

蕎麦湯と魚粉を入れた温かいつけ汁は、先ほどの味とは全く様変わりした。「煮干しそば」のスープのような風味がして、卵が溶き卵状態になり優しい味。卓上の「食べるラー油」を入れると、ピリッとしてもっと美味しくなった。この蕎麦湯のおかげで「かけ蕎麦」のようになり、最後まで飽きずに食べることができた。
そうしてオレたちは店を出た。
ラー油は日中文化の架け橋?
良太:どうだった? そばにラー油を入れる理由、わかった?
周:あ、ああ、まあね。良太は?
良太:周がお店の人に聞くんじゃないかなって期待していたからあまり考えていなかったけど。それで周の答えは?
周:お客さんを見たろ。結構ガテン系や体格でかめ系の若い男の人ばかりだった。普通、蕎麦屋っていうと、年齢層高めだけど、ここは、若い人が多かった。つまり……
良太:つまり?
周:日本の文化である蕎麦を現代の食欲旺盛な若者に食べさせ、文化を継承するための架け橋。それが「ラー油」入れる理由ってとこかな。歴史って文化の分岐点みたいな新しい発想がいつの時代にもあるし。それに「ラー油」って日本の調味料じゃないだろ。確か中国。海外文化の融合という理由もある。
良太:いろいろと大げさだな。ただ、美味しいからというだけでは当たり前すぎるしね。
というわけで、ボクたちは店を後にした。初の「つけ蕎麦」が予想以上に美味しくて、ボクは「つけ蕎麦」を好きになった。また違う味の「つけ蕎麦」を食べに行こうと良太と約束して、今日の日曜ランチは終了した。
(イラスト◎うえむらのぶこ 構成◎土原亜子)
●SHOP INFO

店名:なぜ蕎麦にラー油を入れるのか。
住:東京都新宿区大久保1-3-22
TEL:03-6302-1178
営:11:00~16:00 17:30~22:00
休:なし