魅惑のスパイスラーメンの楽しみ方とは?

その赤黒い色のスープをひと口すすった時、最初に浮かんでくるのは「スパイシー」という言葉かもしれません。でもそこに広がる景色は、インド……ともやや違う様子。オリエンタルな香りには違いないけれど、その奥にはどうやら欧風な景色もちらほら垣間見えるような。
そんなスープの秘密を探るべく、さらに何度もすすり続けるうちに、今度は鰹と鯖のダシ、醤油による和の風味が押し寄せてくる。ここに至って、いよいよ味蕾が喜び乱れつつ、ゆるゆるとほころんでいきます。まずはそんなエキゾチックなスープの奥深さがスパイス沼の入り口です。

いよいよ麺に突入。ジンダギーの店の母体は熊本でも熱いファンダムを持つ魚雷グループですが、何度も試した上で、あえて選んだのは東京の三河屋製麺の中太麺。国産小麦を使用した加水率低めの麺は、無国籍なスープをまとってむっちりエキゾチックにビルドアップ。赤黒く染まったスパイシーな麺をツルリずるりと夢中にすすり続けるのみ。幸福なるスパイス体験が止まりません。
さらに驚くべきは、このスパイスラーメンはライスにも合うように絶妙にチューニングされていること。麺だけでなく、ご飯にかけてもまた違った表情を見せてくれるのです。そこでおすすめしたいのが「スパイスラーメンプレート」(1250円)。
ライスにスープをかけたスパイスライスはシャバシャバとしていながらも、これまた決して単なるカレーとも呼びたくない、どこにも属さない絶品の異国飯。そんな絶妙のチューニングを独自に探し求めたことこそ、ジンダギー店主の誉れというべきでしょう。

「ラーメンにもライスにも両方にフィットしつつ、絡み合うスパイススープ。その微妙なバランスを探すのにかれこれ3年くらいかかりました」
そう語るのは店主の本田大輔さん。あの『庖丁人味平』を彷彿とさせる、いかにもウマいものを拵えそうな雰囲気を持つその人は、人懐っこく眉を下げながら完成までの道のりを語ってくれました。

きっかけは、東京に住んでいた頃に食べた、とある店のカレーラーメンのかすかな記憶だそう。そこからラーメンにもライスにも合うスパイスとスープのバランスを試行錯誤していったとのこと。
母体である魚雷グループの店舗に勤めつつラーメンを作りながら、時にオリジナルスパイスラーメンのメニューを出して少しずつ味をブラッシュアップ。約3年の月日をかけてようやく完成したのが、こちらのスパイスラーメンなのです。
「最初から普通のカレーラーメンを作る気はなくて、とにかくまだどこにもない“スパイスラーメン”が作りたかったんです。ただ難しかったのはラーメンにもライスにも合うスパイススープの粘度と配合。それをいろいろと試していったら、ようやくオリジナルに近づいていった感じです」

メニューには平打ち麺を使ったつけ麺もあり、こちらもラーメンと甲乙つけ難い旨さ。もっちりとした平打麺がスパイススープに余すところなくからみつき、まさにやみつきになる一品です。
そしてさらにオススメなのが夜部門のスパイスおつまみメニューの数々。タマネギや辛メンマのアチャール、チャーシューマサラ風炒め、そしてその日の限定のおつまみなど、いずれもビールやサワーへの渇望が止まらなくなる逸品ぞろい。

辛いおつまみをアテに酒を飲みつつゆっくりテイクオフして、最後はスパイスラーメンで〆てランディング。これが贅沢なスパイシー沼旅行の最強プランです。

「スープの火の入れ具合、スパイスの組み合わせの精度、まだまだ毎日試行錯誤しながらやっています。自分でも想像してなかったようなオリジナルのラーメンを出しているので、できるだけ先入観を持たずに食べに来て欲しいですね」と店主の本田さん。
熊本に行く予定のある人は、ぜひ訪れて唯一無二の美味しすぎるスパイス沼にどっぷり浸ってみてください。
(取材・文◎中村 慎)