
中3男子といえばいつも腹ペコ。都内公立中学に通う「良太(リョウタ)と周(シュウ)」の2人は、“旨い、安い、大盛り”と聞けば、自転車を飛ばし、どこにでも行く。そんな中3コンビが、今回は阿佐ヶ谷の人気パスタ屋『ミート屋』へ。前々から行きたかったミートソース専門店の味を初めて食べた感想は?

ある日曜日の朝練後、憧れの『ミート屋』へ
良太とボク(周)は、毎週日曜日、朝練後に昼食を食べに行くのを楽しみにしている。いつもはマックかサイゼ、吉牛。日曜ランチの1回の予算は600円だ。でも今日は、事前に良太の情報で、阿佐ヶ谷の『ミート屋』に行こうと約束していて、そこははるかに自分たちの“予算超え”だということはわかっていた。

良太:阿佐ヶ谷商店街にある『ミート屋』は、肉屋ではなくパスタ屋。メニューはたった1つ、ミートソースだけ。ものすごく人気店で、週末になると、いつも行列ができてるから、前からずっと行ってみたかったんだよ。
周:並んでまで食べたい人がいるのは、相当、美味しいんだろうね。でも、ミートソースは家でよく食べるけど、あまり外で食べたことがないなぁ。家の味とどう違うか知りたいね。行ってみよう。
ランチ時間を少しずらして13時半に店の前で待ち合わせをした。到着すると……。

周:この時間でもかなり並んでるね。10組はいるよ。
良太:看板に「満席の時は、店内で食券を購入してからお待ちください」って書いてある。
周:じゃあ、早く食券を買いに行こう。
良太:ちょっと待って。まだ何にするか決めてないから。
周:え? メニューはミートソースだけだよね。ナポリタンとかないんでしょ。
良太:違うよ。決めるのは“量”だよ。あっちの看板には「普通、大盛り、特盛り」って書いてあるよ。食券もその3つから最初に選んでおくみたいだよ。
周:なるほど。でもさ、俺ら「特盛り」に決まってるじゃん。

良太:特盛りは1,200円だよ。昼飯予算の2倍だし。あと、思い出して。先週のからあげ食べ放題「あげもんや」で、俺ら食べ過ぎて、周は最後、声も出なかったじゃん。
周:あれは確かにやばかった。だけど、今日は麺だし、今、俺、腹減りすぎてるから絶対「特盛り」だよ。次は節約するから、今日はそれを食べようよ。
というわけで、ボクも良太も「特盛り」の食券を購入し、並んで待つこと約30分。入店したら、店内はカウンター席だけ。目の前に料理を作る人がいて、ボクたちの「特盛ミートソース」ができるまでの工程がよく見える。
良太:この店はミートソース専門店だけというだけではなくて、 “極太熟成生麺”っていうのが特徴らしいよ。
周:さっきから、気になってんだけど、作ってる人は、まずお皿に白いマヨネーズのようなものを入れてから、そこに茹で上がった麺を入れて和えてるね。あのマヨネーズみたいなの、なんだろう。
良太:バターかな……。
頭のいい良太もわからないようだった。そのとき、お店の人に、紙エプロンを渡された。
周:焼肉屋みたいだね。
良太:周は白いトレーナー着てるから、絶対、エプロンしたほうがいいよ。っていうか、ミートソースを食べるのわかってて、わざわざ“白”を着てくるなんて(笑)
周:良太はわざわざ “黒”を着てきたんだな。さすがだな。それはそうと、見てよ、「食べ方のちょっとしたコツ」というのが書いてあるよ。

良太:フォークとスプーンを用意し、ミートソースが来たら、上下左右10回まぜる。
周:パスタ全体に照りが出るまで混ぜたら食べ頃サインだって。でも照りってなんだろ?
良太:うーん。わからない。その後に、お好みでタバスコや粉チーズを投入して……
周:さらに、熱々の10分以内に食べること、だって。面白いな。やってみよう!
最初に小さな器に入ったセットサラダが登場し、続いて、俺たちの「特盛りミートソース」がやってきた。期待していた「特盛り」という割に、自分にとっては少なく見えるが。これは、お母さんがブツブツ言いながら作る“やっつけミートソース”とは違うのだろう。家のミートソースは、やけくそみたいに麺が多いが、ソースは少なめ。

周:10回くらいかき混ぜたよ。これが照りかな。
良太:わからない。そもそも照りって何だろう。
周:お店の人に聞いてみようか?
良太:大人はそういうこと聞かないと思う……。全体にソースが絡んだらいいっていう意味だと思うよ。ツヤツヤしてきた気がする。
周:なんだか“まぜ麺”みたいだね。
そこから、俺たちは無口になった。食べるのに忙しいこともあるが、家の味とぜんぜん違って美味しいからだ。
ミートソースは肉々しく、平たく太い麺は、今まで食べたことがないもちもちした食感だ。家では、お母さんが「アルデンテだよ」と言って、乾麺を固めに出すけど、もしかしたら、あれは単にイライラして失敗をしているからかな……。
俺たちは、無言のまま食べ終えた。並んでいるお客さんもいて気まずいので、さっさと店の外に出た。
周:家のミートソースは、もっと赤いけど、ここのは、ちょっと黒かったね。
良太:確かに、お母さんの作るミートソースは赤くて、トマト味が強いけど、ここのは“ビーフシチュー”みたいな味がしたね。甘くもないし、酸っぱくもない。だからと言って辛くもないし。コクっていうのかな。
周:ミートソースって、いろいろあるんだね。家のとは“別物”だったね(笑)
良太:でも、お母さんには内緒にしておいたほうがいいよ。「ミート屋のミートソースが美味しいから同じ味にして」なんて言ったら、絶対、いい顔しないから。
周:確かに。ねえねえ、それより、あれをみて、あっちにも行列があるよ。
ボクが指をさした先は『ミート屋』の店の向かいの店『たいやき ともえ庵』である。
