豆の味を見定める「カッピング」の体験に行ってみた【中編】【コーヒープレス古今東西 10話】

手順3「ブレイク」

 表面にあるコーヒー豆の「蓋」を取り除き、撹拌する「ブレイク」を行う。スプーンで、表面に浮いた豆を手前から奥に押すように「蓋」を開け、その後しっかりとカップの底まで届くよう3回かき回す。かき回す方法も回数も、すべて同じにしなければ条件が揃わないため、「蓋を開ける瞬間」はなかなか緊張するのだ。

蓋を開けた瞬間、ふんわりと香りが漂うため、あらかじめ鼻を近づけておき、スプーンを動かすと同時に香りを嗅ぐ。スムーズな動きの櫛浜さんに対し、慣れない私はあたふた。
蓋を開けた瞬間、ふんわりと香りが漂うため、あらかじめ鼻を近づけておき、スプーンを動かすと同時に香りを嗅ぐ。スムーズな動きの櫛浜さんに対し、慣れない私はあたふた。

手順4「テイスティング」

ここまでは香りのみの評価だったが、いよいよ味のチェック。実際に口に入れてみる「テイスティング」がスタート。まずは表面に浮かんだ泡を、カップそれぞれ丁寧に取り除いてゆく。

泡を取り除くのに使ったスプーンは、他のコーヒーと味が混ざらないよう、毎回水ですすいで、キッチンペーパーで水気を取ってから使用する。味の変化は繊細なのだ。
泡を取り除くのに使ったスプーンは、他のコーヒーと味が混ざらないよう、毎回水ですすいで、キッチンペーパーで水気を取ってから使用する。味の変化は繊細なのだ。

 続いて、お湯を注いだコーヒーをスプーンに取り、おそばをすするようにスッとすすり、飲みこまずに紙コップに吐き出す。この「すする」のがコツをつかむまで難しいのだが、うまく口の中に霧状に広がると、コーヒーの味わいがふわりと口と鼻に抜けてくる。

「テイスティング」を実演指導してくださる櫛浜さん。一生懸命マネをしてみるのだが、なかなか同じようにはできず、口に入れては出し……を繰り返しながら練習。
「テイスティング」を実演指導してくださる櫛浜さん。一生懸命マネをしてみるのだが、なかなか同じようにはできず、口に入れては出し……を繰り返しながら練習。

 一種の豆を試すごとに、口を水ですすぐのかな?と思っていたのだが、カッピング中は口をすすぐのはNGとのこと。水を口に入れることによって豆を味わう条件が変わってしまう、というのがその理由。熟練の審査員は、このカッピングによって原産国や農園の違いはもちろん、生豆の状態や焙煎との相性の良し悪しまで感じ取るのだというから、スゴイのひと言。

 こうやって6種を試し比べさせてもらうと、酸味の持つ個性や甘さの種類など「けっこう豆によって違うものだなあ」と驚き、感心させられる。それにしても「感じた味を感じたままにメモする」というのがこんなに難しいとは。「さっきのもお花のような華やかな香りに感じたけど、この豆も華やかで、でも違う花っぽいんだよな、うーん……」のような悩みで記述にも苦労する。

 うんうんと唸りながらメモを完成させたところで、最後は飲んだ豆の解説をしてくれるそう。カッピング体験の最後となる次回はその内容についてお届けしたい。

●著者プロフィール

写真・文/木内アキ

北海道出身、東京在住。”オンナが楽しく暮らすこと”をテーマに、雑紙や書籍、ウェブなどで人・旅・暮らしにフォーカスした文章を執筆。プレスコーヒー歴7年。目標は「きちんとした自由人」。執筆活動の傍ら、夫と共に少数民族の手仕事雑貨を扱うアトリエショップ『ノマディックラフト』を運営中。
HP: http://take-root.jp/