皮だけでも幸せになる至極の肉まん

『篭蔵』の「肉まん」をもう少し細かく説明すると、皮はもっちり、しっとりとしていて、布団のようにフカフカ。さらに生地はきめ細かく、口溶けが良くて非常に上品な味です。
この皮だけでも幸せな気分になりますが、中の肉餡も秀逸。タケノコ、シイタケ、ネギ、豚の挽肉の具材をよく練り込んでいて、こちらもフワフワと柔らかくお肉がほどけ、まるで上等なハンバーグのような肉汁が口の中にほとばしるのです。
ちなみに、見た目には皮が厚くて、肉餡の量が少なく見えるかもしれませんが、このバランスが実は絶妙なのです。

『篭蔵』の肉まんの美味しさの秘密は、なんといっても、皮も餡も毎日、ご主人・有本智次さんが手作りしていることです。1日に製造した肉まんは飛ぶように売れ、今の時期は、注文も殺到しているので、追いつかないと言います。
「生地を練って発酵させ、手でのばして餡を包んで蒸す。この作業を1~2人でやっているので、肉まんは1日4回、全部で300個までしか作れないんですよ」と有本さん。

それでも有本さんが手作りにこだわる理由は、機械で作るのとは全然味が違うことを熟知しているから。
「うちは、約40年前に吉祥寺のラーメン屋『一圓』の餃子からスタートした店で、今でも『一圓』本店の餃子を作っています。一時期、この餃子があまりにも人気で、手作業では追いつかなくなって機械に変えたことがあるんです。でも、明らかに味が落ちました。だからすぐに手作りに戻したんです。肉まんも餃子も、やっぱり皮が命。生地は生き物だから、手作りじゃないとこの味にはならないんですよ」(有本さん)
とくに難しいのが生地の発酵。季節、気温、湿度、肌の感覚なども重要で、ちょっとした変化を感じ取って発酵の時間、包むタイミングなども変えているそうです。

最後に、有本さんに『篭蔵』の「肉まん」を美味しく食べる秘訣を聞くと、「やはり蒸し器で蒸すのが1番美味しいですね。電子レンジは、味も食感も変わりますから、やめて欲しいです」ときっぱり。
言われてみれば、筆者も電子レンジで解凍+温めをして失敗した経験があります。ここの肉まんの最大の美味しさは、やっぱり皮の食感と味。電子レンジでは、それが台無しになってしまうわけです。今回、丁寧に肉まんを作る有本さんの姿をみて、改めてちゃんと蒸して食べようと思いました。
ぜひ一度、吉祥寺の『篭蔵』の「肉まん」を食べてみてください。本当に幸せを感じさせてくれる肉まんですよ。
(撮影・文◎土原亜子)