オンラインでホップ畑の様子が見られる

遠野は日本最大のホップの生産地です。ホップ農家全体をみると、高齢化や担い手不足などにより、生産量は直近約10年で約半減しています。そんな状況を踏まえ、2007年に先述の「TKプロジェクト」を発足したり、2018年にキリンと農林中央金庫の出資による「BEER EXPERIENCE株式会社」が誕生したりしました。「ホップの里からビールの里へ」を合言葉に地域活性化を進めています。
「オンラインでのビールイベントってどんな感じかな?」と思いながら参加したのですが、8月末の段階で約10回開催し、のべ200人が参加しているとあり、その内容は大充実! BEER EXPERIENCE社の方々が、実際にホップ畑を歩きながらホップに関する豆知識などを解説してくれるので、現地を訪れているような気分になりました。

イベント開催前には遠野の味覚が詰まったボックスが届いていたので、そこに入っていたビールを片手に乾杯! 畑に生えたホップの香りこそ伝わらないものの、オンライン飲み会みたいで気楽に楽しめるのが良かったです。
「TONO HOP BOX」で遠野のビールとおつまみを堪能

今回、筆者の手元に事前に届いた「TONO HOP BOX」には、遠野のホップを使ったクラフトビール3種類、ホップシロップ、遠野パドロン、燻製とうふが入っていました。TONO HOP BOXは、遠野風の丘オンラインショップ、ふるさとチョイス、遠野のふるさと納税で販売したところ、初回の200セットは完売したほど人気の商品。現在は第二弾が販売中です。ビールと地元の食材がセットになっていて、自宅に居ながらにして遠野を感じることができます。
今回送られてきたビールのなかで筆者の一番のお気に入りは、「スプリングバレーブルワリーMURAKAMI SEVEN IPA」でした。「MURAKAMI SEVEN」という新品種のホップを使ったIPAで、いちじくやみかん、マスカットのようなフルーティーな香りが感じられます。IPAはどっしり重いビールのイメージが強かったのですが、ごくごく飲めるのに驚きました。

遠野ホップ収穫祭のイベント限定ラベルの「IBUKI HOP IPA」は、遠野産の「IBUKI」というホップのみを使用したIPA。IPAらしいずっしりした苦味のなかに、爽やかな柑橘系のフレーバーを感じられるので、IPA好きにはぜひ飲んでみてほしいビールです。通常ラベルのものは継続販売されるのでお試しあれ。

「ONE AND ONLY TONO LAGER」は、遠野産IBUKIを一部使用したクラフトビールです。こちらは遠野の醸造所「ズモナビール」と「遠野醸造」が共同で仕込んだ限定ビールとなっています。ラガービール特有の苦味も感じつつ、トロピカルフルーツや柑橘系のような香りや苦みもあり、すっきり飲める味わいです。

ホップを加工した「Herb Cordial Hop Syrup」というシロップもあり、こちらはIBUKIを100%使用しています。はちみつの代わりにホットケーキにかけて食べたり、炭酸水やお湯で割って飲んだりと、いろんな楽しみ方ができるそうです。炭酸水で割って飲んでみたところ、甘みのなかに少しホップの青々しさや、スパイスの風味が感じられて、一度飲むとクセになるおいしさでした。

これらのビールと合わせて食べたいのが、「遠野パドロン」と「燻製とうふ」。遠野パドロンはししとうのような形の野菜で、もともとはスペインでビールのおつまみとして食べられていたのだとか。

さっと素揚げにして食べると、甘みとともにほんのり苦味が感じられ、ビールとの相性はたしかに抜群。まだまだ栽培量が少ないので全国流通していない野菜なのですが、最近ではオンラインでの販売も始めているそうです。
11月4日からは今年遠野で収穫された生ホップを急速冷結して使用する「一番搾り とれたてホップ生ビール」も期間限定で発売されます。あの手この手で遠野生まれのホップのおいしさを思う存分楽しんでみてください!
●著者プロフィール
今西絢美
「おいしいものナビゲーター」として、調理家電や食に関する記事を執筆。フードツーリズムマイスター、利酒師の資格も持つ。ウェブサービスやアプリのトレンドも絶賛追跡中。コンテンツ制作会社「TEKIKAKU」取締役。