ガチ中華のメニュー攻略法とは?

というわけで、いざ入店。まずは落ち着いてメニューを眺めましょう。たいていのガチ中華の店には、メニューが2種類あります。日本で知られている一般的な中華料理(麻婆豆腐、青椒肉絲、炒飯など)と、そのお店でしか味わえない「定番」。『湘厨』の場合、「本格湘菜(=本格湖南料理)」と書かれたメニュー表があり、そこから料理を選ぶのが“ガチ湖南”を楽しむコツです。
マストオーダーは、なんと言っても「蝋肉炒香干」(ラーロウと燻製豆腐の炒めもの)1580円です。初めて食べた時に「こ、このお店の料理、スゴいかも…!」と驚かされた料理がこれでした。
湖南料理といえば、「ラーロウ」は外せません。塩や醤油で漬けた干し肉で、イメージとしてはベーコンに近いです。中国各地で食べる習慣がありますが、“湖南省バージョン”は特にクオリティが高いことで有名。米ぬかで燻製にするのが特徴で、しょっぱすぎず、味わい深さと香り高さが際立っています。

そんなラーロウと組み合わせるのは、湖南省を代表する食材の一つ「香干(シャンガン)」、いわゆる豆腐の燻製です。燻製と聞くと、チーズもそうですが、噛んだ瞬間のやや硬い食感を思い浮かべませんか? 実際、今まで私が食べた東京近辺の湖南料理店も、表面が硬い香干を使うお店がほとんどでした。
しかし『湘厨』の香干は自家製で、燻されているのにふんわり柔らかく、なめらかです。これがまたラーロウとの相性が絶妙で、ひと口食べると本当に箸が止まらないほど美味しいんです(ご飯ともめちゃくちゃ合います!)。
魚の頭の唐辛子ソースも必食の旨さ!

また、「湖南料理といえば」ということなら、「ドゥオ椒魚頭(ドゥオジャオ・ユートウ)」(魚の頭の唐辛子蒸し)1800円もぜひ食べてほしい! ドゥオジャオは湖南省や四川省などで作られる赤い唐辛子の塩漬け。これが湖南料理の辛旨味の“秘密兵器”でもあります。ちなみに『湘厨』のものはすべて湖南省から取り寄せた逸品。これが“本場”の味を生み出す大きな役割を担っています。

この料理はもともと川魚で作るのが一般的ですが、『湘厨』の魚頭は2種類が用意されています。一つは日本で水揚げされた鯛で作るバージョンと、中国産の川魚で作るもの。どちらも美味しいですが、ガチ中華を堪能したい! という方はぜひ川魚に挑戦してみてください。より現地感が味わえます。

最後、食べ終わったら魚のダシがたっぷり染み出したスープに中華麺を入れていただきます。ピリリと辛い最高の魚介出汁ラーメンが味わえますよ。
湖南直送のきのこ料理も最高に美味しい

それ以外に『湘厨』に行ったらいつも頼むのは、たけのこや野生キノコをふんだんに使った料理たちです。前述のラーロウと一緒に炒めることが多いですが、筍もキノコも中国から取り寄せた本場モノ。日本のきのこももちろん美味しいですが、不思議なことに味がどうしても違うんですよね。
初めてタケノコ料理を食べた時、「コリコリの食感で、とても美味しいですね」とオーナーのお姉さんに言うと、ニコニコしながら「私の親戚が湖南省の山で採ってきた新鮮なタケノコですから」と教えてくれました。その瞬間、私も自分の地元・浙江省の山で採れたきのこを思い出し、故郷をしみじみ感じました。

「野生キノコの汁なし鍋」にもラー肉が使われていますが、ラーロウの香りと湖南唐辛子の旨辛さ、そして干しキノコの旨みが、何層にもなって体全体に響いてくるような、得も言われぬ食体験ができると思います。
ガチ中華のお店で使える裏技とは?

最後に、皆さんに「ガチ中華」を楽しむもう一つの「技」をお教えしたいと思います! それは、お店に着いたらまず、「今日入荷したオススメの食材や料理はありますか?」と一言聞いてみることです。すると、おそらくメニューにないものを挙げてくれると思います。
『湘厨』の場合、メニューにないものでも、例えば私が湖南省に旅行に行った時に食べた「擂椒皮蛋」(ピータンと焼き青唐辛子の和え物)がどうしても食べたくなり、オーナーさんに相談してみたところ、「湖南料理なら、事前に言ってくれれば、できるものは作りますよ」と、本場の「擂椒皮蛋」を出してくれました(もちろん味も抜群でした)。もし中国ツウの方で、湖南省料理のアレが食べてみたい! というリクエストがあれば、ぜひお店の人に聞いてみてください。
まとめ

食材の仕入れルートや調理法だけを考えても、日本で中国本土の味を再現するのは決して簡単なことではないと思います。その点、『湘厨』は湖南省ならではの食材と味にこだわり、本当に毎週食べに行きたいと思えるほど良いお店です。横浜中華街にもこんなお店がさらに増えて、“元祖チャイナタウン”から、改めていまの時代に合った「チャイナタウン」に進化するといいな、とずっと思っています。