韓国ノワール風に食べてみた

そもそも筆者が韓国のインスタント麺を好きになったきっかけは、韓国映画の影響。とくに暴力的なシーンの多いノワール系に登場する、例えば刑事や探偵、殺し屋、ヤクザや売春宿の社長、出所したばかりの前科者などが、“黒い汁なしの麺”、すなわち「チャジャンミョン」(韓国風ジャージャー麺)を食べるシーンがしばしば登場するのです。

そしてポイントは、誰一人として美味しそうに食べない、という点です。雑にグルグルとかき混ぜ、「味などどうでもいい」といった感じで真っ黒な麺をズルズルと音を立てて食べるのが常。箸で持ち上げた麺を一瞥すらしません。
そうなると、逆にその雑に扱われる麺の味が観る者にとっては気になるわけです。もっと言えば、やたらとその麺が美味しそうに見えてくるのです。

そこで今回は、手に入れた「チャパグリ」のカップ麺を、韓国ノワールの作法にならい、なるべく無感情に食べてみることにします。まずはフタをペリペリではなくベリッと一気にはがし、熱湯を麺がそこそこ隠れればいいか、という具合に適当に注ぎます。とにかく雑にやります。

ここで、「書いてあるとおりきちんと作ろう」とか、「出来上がりが楽しみ」とか、生真面目で前向きなことは一切考えません。麺に興味などない。このスタンスを死守します。
できれば映画の登場人物のように「犯行当日のアリバイ」や「シリアルキラーの悲しい生い立ち」など、麺とは関係ないことを考えます。すると4分を過ぎてしまうかもしれませんが、それはそれでいいのです。そろそろいいか、というところでザバッと湯切りします。

そして粉末スープと調味油の2つの小袋。これも、ちまちまと開けてはいけません。韓国ノワール的なマナーとしては、ワイルドに歯で噛みちぎって投入です。多少、カップの外に飛び散ってしまうのもOKです。
いよいよ麺をかき混ぜます。この時も気だるく、やる気なくグルグルと混ぜます。すべてキレイに混ざったかどうか怪しい。そのあたりで、一気に麺を口に運びます。「チャパゲティ」の独特の香ばしさでむせそうになりますが、「ノグリラーメン」ほど辛くはありません。全体的にマイルドで丸みのある味わいという印象。

麺は、袋麺よりはやや細めですが、もっちりしていて噛みごたえもあります。そしてノグリの海鮮風味もきちんと感じます。『パラサイト』で美人妻が一心不乱に食べていたのも納得です。美人妻は金持ちなので高級牛肉をトッピングしていましたが、筆者はキムチを入れたいなぁと思いました。
ところで、麺を少し味わったところで、必ず鳴るのがスマホです。これも韓国映画ではお決まりのパターンで、第2の殺人事件が発生するのです。だから主人公は「チャパグリ」を食べ終わらないうちに箸を捨てて飛び出していくのです。「ああ、もったいない。あの残った黒い麺はどうなるの? というかどんな味だったんだろ」と気になる視聴者はきっと多いはず。これが、韓国のインスタント麺をより魅力的に見せている要素な気がします。
というわけで、日本初上陸の「チャパグリ」カップ麺。韓国映画風に食べる必要はまったくありませんが、できれば韓国ドラマや韓国映画を観ながら、キムチと一緒に食べると、より美味しく味わえると思いますよ。
(撮影・文◎土原亜子)