「神田志乃多寿司」の五色詰合せ(淡路町)【第12回 小みやげネタ帖】

差し入れ以上、贈り物未満、アンダー1,500円のささやかな手みやげを“小みやげ(こみやげ)”と勝手に命名。気の置けない友人に、ちょっとしたお礼に。おいしくて財布に優しいうえに、もらった側もお返しいらずの気楽なアイテム。関西出身ライターが日常遣いする、テッパンの東京みやげをご紹介します。

エンタメ度抜群の
賑やかな寿司詰め合わせ

しのだのり巻五色詰め合わせ(1,415円)は稲荷寿司、かんぴょう巻、太巻、たくあん巻、かっぱ巻が入って賑やか。数百円から1万円超えまで、価格帯が幅広いのもありがたい。

しのだのり巻五色詰め合わせ(1,415円)は稲荷寿司、かんぴょう巻、太巻、たくあん巻、かっぱ巻が入って賑やか。数百円から1万円超えまで、価格帯が幅広いのもありがたい。 | 食楽web

 前回は潔くかんぴょう巻1本で勝負したが、今回は賑やかな詰め合わせのお話を。色とりどりの五色詰め合わせは、持ち帰り寿司ならではの人なつっこさがいい。

 まずは二大名物、粋なかんぴょう巻(前回記事を参照)と稲荷寿司。稲荷寿司は5種の砂糖と濃口醤油で丁寧に炊き上げた揚げがコクたっぷりの深い味わい。シャリに入ったレンコンのしゃくしゃくした食感も小気味好い。そしてかんぴょう、キュウリ、でんぶ、卵、シイタケがまとまりじんわり優しい太巻、風味豊かなたくあんの食感が楽しいたくあん巻、胡麻の風味が利いてさっぱりとしたかっぱ巻き。それぞれにきちんとおいしいのが凄い。五種五様の魅力が1箱にぎゅっと詰まった、完成された世界だ。

 飽きがこず老若男女に喜ばれる味に、五世代で通う常連も珍しくない。「それぞれにお決まりがあるから、暖簾をくぐって来られた瞬間から“いつものお寿司”を作り始めることも多いです」と4代目の原田勝信さん。

 日常遣いはもちろん、片手でつまめる手軽さゆえ、花見などの行楽から神田祭り、企業の運動会などのイベント、楽屋見舞いや選挙の陣中見舞いに至るまで、幅広いシチュエーションで愛されている。ハレにもケにも寄り添う、実によくできた巻き寿司なのだ。

 また、味だけでなく、愛らしい包みにもファンも多い。トレードマークの黄色い包装紙は、先代と交流があった画家・鈴木信太郎氏によるもので、紙を解くと谷内六郎氏画の折蓋が顔をのぞかせる。なんとも贅沢なコラボレーションである。

 包みに書かれた「世界の味・日本の代表」という言葉が物語るように、最近は口コミで外国人観光客もじわじわ増えているとか。3年後の東京オリンピックでも大活躍することだろう。

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店名は稲荷寿司の語源とされる大阪・和泉市の信太森葛葉稲荷(しのだもりくずのはいなり)神社に由来。浄瑠璃『葛の葉の子別れ』に登場する白キツネが暖簾のモチーフに。

稲荷寿司とかんぴょう巻が入った杉箱(62個6,480円、158個17,280円)は、圧巻のボリューム……! いつか小粋に差し入れするのがひそかな夢。

稲荷寿司とかんぴょう巻が入った杉箱(62個6,480円、158個17,280円)は、圧巻のボリューム……! いつか小粋に差し入れするのがひそかな夢。

海老や穴子、レンコン、胡麻など味も食感も楽しい混ぜご飯を、つややかな薄焼き卵で包んだ茶巾寿司(1個400円)もぜひ。箱寿司や押し寿司などの大阪寿司も多彩で迷う。

海老や穴子、レンコン、胡麻など味も食感も楽しい混ぜご飯を、つややかな薄焼き卵で包んだ茶巾寿司(1個400円)もぜひ。箱寿司や押し寿司などの大阪寿司も多彩で迷う。

平成22(2010)年、モダンな建物に変身。東京都選定歴史的建造物が点在する趣ある神田須田町エリアへもすぐ。蕎麦の「神田まつや」や甘味処「竹むら」も併せて立ち寄りたい。

平成22(2010)年、モダンな建物に変身。東京都選定歴史的建造物が点在する趣ある神田須田町エリアへもすぐ。蕎麦の「神田まつや」や甘味処「竹むら」も併せて立ち寄りたい。

●SHOP INFO

店名:神田志乃多寿司

住:東京都千代田区神田淡路町 2-2
TEL:03-3255-2525
営:7:30~18:00(地下のイートイン「新味匠 静智庵」は11:00~14:30)
休:火曜(祝日の場合は営業)
日持ち:当日
地方発送:不可
ほかに購入できる店:大丸東京店、新宿伊勢丹店
http://www.kanda-shinodasushi.co.jp/

●著者プロフィール

森本亮子

編集・ライター。『東京の手みやげ』(京阪神エルマガジン社)など、手みやげ関連のムック・書籍や雑誌企画を多く手がける。レストランや酒場、肉などの食をメインに、おいしいものと街と人をこよなく愛する関西人。錦糸町在住。