現役トレーナーに聞く筋肉メシ! プロボクサーの減量に学ぶ、一般人が「勝負ボディ」を作る食事方法とは?

現役トレーナーに聞く筋肉メシ! プロボクサーの減量に学ぶ、一般人が「勝負ボディ」を作る食事方法とは?
食楽web

「あしたのジョー」の力石徹や、「はじめの一歩」に登場する鷹村守など、マンガに出てくるボクサーたちの減量といえば、サウナスーツを着て汗を大量に流し、喉が渇いても水を一切飲まない…。そんなイメージがありますよね。来る日も来る日もサウナスーツときつい水抜き。

 確かに、ひと昔前のボクサーはそうしていたかもしれません。そのせいで、一般の方々は、いまだに「ボクサーの減量=多量の水抜き」と考えているのではないでしょうか。

 しかし現代、ボクサーたちの減量は、この「水抜き」を行うのは計量の24時間前。それよりも大事なのは1~2か月の食事制限を行って、体脂肪をそぎ落としていくことです。そして計量直前、“筋肉と皮だけ”のような無駄な体脂肪がそぎ落とされた時点で、やっと「水抜き」を行うのです。

 これはパフォーマンス維持の観点からで、短期間で行う“脱水”ならば体力に悪影響が少ないからです。推奨される脱水量は、体重の5%以内。体重60kgだったら-3kgが上限です。計量の24時間前に、この3キロ増の状態で水抜きをし、体重を合わせていくのです。

 しかし、計量の24時間前の時点で、体脂肪が多いと、体内の水分量が少ないために「水抜き」ができません。つまり「減量失敗」となります。

 ところで、そもそもボクサーはなんでこういう減量方法をとるのか知っていますか? 

 ボクシングはコンタクトスポーツです。体格が少しでも大きいほうが有利になることは容易に想像つくと思います。そして、ボクシングの計量は試合前日に行われます。上記の通り体重の5%以内であればパフォーマンスに影響を与えませんから、直前に水抜きをし、体重を落として計量を終え、試合当日には元通りの体重に戻すわけです。

 そして、一般の方には重要な点は“脱水は元に戻る”ということ。つまり、サウナなどや夏の暑さなどでの発汗で、多少体重が減ったところで、すぐに元通りになるということです。

「勝負ボディ」にも役立つ水&塩抜き

 さて、この短時間の脱水減量法は、競技には全く関係のない一般の方にも、実は参考になります。

 たとえば、海で水着を着るときや、結婚式や同窓会、はたまたデートなど、見た目を少しでもスマートにみせたい「勝負パンツ」ならぬ「勝負ボディ」が必要な時です。ここで、水抜きは非常に役立ちますので、減量テクニックをご紹介しましょう。

計画的な「水抜き」

 ボクシングの選手同様、一般の方も「勝負ボディ」を見せる24時間前から行うとよいでしょう。前述の通り体重の5パーセント以内に抑えれば、体力に関係なく笑顔で勝負ボディを見せることが可能です。

 また、この水抜きを行う際、「勝負ボディ」を見せる一週間ほど前から計画的に水を多く摂取する“ウォーターローディング”を行っておくと、最後の「水抜き」がより効果的になります。

 水抜きの方法は、サウナやホットヨガなどで発汗させて水分を抜きます。家で行う場合は、ミネラル成分が含まれている“エプソムソルト”などの入浴剤を使って半身浴もいいでしょう。ただし、あまり追い込んでフラフラになるような水抜きは、5%を超えている可能性もあるので要注意です。

むくみを取るための「塩抜き」

 ボクサーの場合は、計量の一週間ほど前から食事内容に減塩を心がけて、体内の塩分量=ナトリウム量を減らしていきます。同時に“カリウム”が多く含まれる、サツマイモやココナツウォーターを摂取して、ナトリウムの排泄を促します。塩分は体内、特に“皮下”に水分を蓄える性質があるので、塩を抜いていくことで水を抜きやすくなります。結果、体重をラクに落とすことができます。ですから、一般の方もこの塩抜きは「勝負ボディ」の一週間前から行っておくと、余計なむくみが取れてシャープなボディラインを強調することができるんです。

 繰り返しますが、「水抜き」も「塩抜き」も、長期間やってはいけません。あくまでも塩抜きは1週間程度、水抜きは1日程度で行うことです。「むくみたくない」と言って普段から「塩を摂らない」「水分を摂らない」なんて極端なことは、絶対にやらないでください。

 さて、このように、アスリートの減量は現在、かなり“科学的な正解”から導き出された方法で行われます。しかし、この“科学的な正解”をすべてのトップアスリートが行っているかといったら、そんなこともないのが面白い点です。人それぞれのやり方がありますし、とんでもない減量の仕方をしている選手もいます。しかも強い選手は、どんな方法で減量しても結局強いんですよね。

 でも、一般の皆さまはそんな“超人たち”とは違うわけですから、もし体重を減らしたいと思うのであれば、正しい方法で効率的に努力することが大事です。今回紹介した水抜きや塩抜きはあくまでも、とっておきの「勝負どき」の一瞬のためだけと思ってください。

(取材・文◎土原亜子)

●お話を聞いた方

宮本健太郎

宮本健太郎

『エベレストフィットネス』代表。日本体育大学卒 第一種高等学校教諭(保健体育)。全米ストレングス&コンディショニングスペシャリスト。NSCA認定パーソナルトレーナー。大学生時代よりプロボクシングでの競技生活をスタート。競技引退後は某有名ボクシングジムのチーフトレーナーとして後進の育成に従事し、2011年から2018年3月までこの職を勤めトレーナーとしてのスキルを磨く。今季夏より独立し、ボクシング&フィットネスのジム『エベレストフィットネス東高円寺』を経営。
https://everest-fitness.jp