差し入れ以上、贈り物未満、アンダー1,500円のささやかな手みやげを“小みやげ(こみやげ)”と勝手に命名。気の置けない友人に、ちょっとしたお礼に。おいしくて財布に優しいうえに、もらった側もお返しいらずの気楽なアイテム。関西出身ライターが日常遣いする、テッパンの東京みやげをご紹介します。
繊細可憐な上生菓子、ツヤツヤの赤飯……目移り必至の和菓子パラダイス

前回に続き番外編をお届け。名物の影でコアな人気の裏番長、略して「裏番」(うらばん)をご紹介しよう。
目白の和菓子司「志むら」の裏番は、「福餅」と「日吉団子」と先週お話したが、実はまだある。まずは和菓子店の肝、「上生菓子」だ。ショウケースの一番良い場所に整然と並ぶ季節のお菓子は、美しい見た目と品の良いサイズ、繊細な味わいで茶道教室のお茶菓子としても需要が高い。
「うちの孫はここのお菓子で季節を覚えたのよ」と話すマダムもいるそうで、こんなにおいしい上生菓子をおやつに食べられる目白っ子が羨ましい。初代・志村嘉太郎さんの味を3兄弟で忠実に守ってきた、店の要だ。
それから「赤飯」も外せない。和菓子店の赤飯は大概おいしいものだと思っていたが、ここのはちょっと違う。店に入るやいなや、慣れた様子で赤飯のパックを持ってレジへ直行する常連さんの多いこと。輝く餅米とささげが見るからにおいしそうである。
素材の持ち味を最大限に生かしたシンプルな味わい、別添えのゴマもきっちり風味豊かで嬉しい。上等な器に盛って南天の葉を添えれば立派なご馳走になる、山の手らしい上品な赤飯だ。ちなみに、噺家の故・5代目柳家小さん師匠はこれが大好物で、「1月2日の誕生日には、特別にお作りした切山椒と一緒にご自宅に配達するのが恒例でした」と女将の志村友子さん。小さん師匠の気持ち、よ~く分かるなぁ。
他にも羊羹にどら焼き、乾き菓子など、バラエティ豊かな和菓子が店内に並ぶ(ちなみに大の甘党、女将さんの一番の好物は、薯蕷饅頭とのこと)。和菓子の魅力を存分に楽しめる “小みやげ”の宝庫であり、差し上げた相手が“志むらラバー”になる率がすこぶる高いのだ。こんなにかゆいところに手が届く和菓子処を、私は他に知らない。
●SHOP INFO
店名:志むら
住:東京都豊島区目白3-13-3
TEL:03-3953-3388
営:9:00~19:00(祝日は~18:00、喫茶は10:00~、LOは閉店30分前)
休:日 ※年始は1月4日から営業。2.3階の喫茶は改装工事中、2月中旬から営業再開予定。
日持ち:福餅、日吉団子、赤飯は当日中、九十九餅は3日
地方発送:一部可(※九十九餅は可)
ほかに購入できる店:なし
※福餅と日吉団子、一部の商品は1月10日から販売。
●著者プロフィール
森本亮子
編集・ライター。『東京の手みやげ』(京阪神エルマガジン社)など、手みやげ関連のムック・書籍や雑誌企画を多く手がける。レストランや酒場、肉などの食をメインに、おいしいものと街と人をこよなく愛する関西人。錦糸町在住。