気ままなホームパーティに登場する酒器の記憶について。【酒器も肴のうち】

お酒をつぐ器、お酒を飲む器。酒器に思いを巡らせると、気になってくるあの人のお気に入りや、あのお店のセレクション。酒器を愛でながら一献傾けるのが好きなライターによる酒器折々、酒器こもごも。

気ままなホームパーティに登場する酒器の記憶について。【酒器も肴のうち】
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『酒器も肴のうち』第46献は前回に続き、フラワーアレンジメント教室「Atelier はなえがお」主宰の芳賀尚枝さん。

 当初「大人数が集う気軽なホームパーティが多いので酒器もグラスも質より量。お見せできるようなものはないです」と謙遜気味だったが、あれこれ拝見させていただくと、興味を引くものが出てくる出てくる。

 そもそも、立派な酒器が佳肴とは限らない。そこにあるエピソードこそよい肴になるし、ときにお初にお目にかかるようなユニークなものや個性的なものなどは格好の肴である。

「いつどこで買ったの? と聞かれてもうろ覚えなものも多くて。旅行先で手に入れたものやいただきものなど、ごちゃまぜです。

 うすはりのグラスはいただいたもの。カットがそれぞれ異なるグラスは日本酒にも洋酒にもお水にも使えるサイズがちょうどよくて5個セットで買いました」(芳賀さん・以下同)

 万能選手の蕎麦猪口同様、使い勝手がよさそうなサイズ感。もし芳賀さんのホームパーティに招かれたなら、迷わずこのグラスを選びそうだと、妄想一献。それから、木目がきれいなカップも気になるのだが。

「定かではないんですが福島・南会津で買ったような(苦笑)。しゃもじとかまな板とか、お手頃な木工品がたくさんあって、そこで何の気なしに手にとって、これいいねと購入した気がします。軽くて手になじみよくて、安定感もあって気に入っています」

 旅のノリや勢いで買ったものもあれば、お土産でもらったものなど、筆者自身も実際判然としないものがある。器店でもなければ専門家でもないので、そこはよしとしている。芳賀さんの酒器コレクションで十分満たされ、自然とお酒の話題に。

「夫の実家が宮城・塩釜。ご存知かと思いますがそこの地酒を飲むことも多いですし、私の誕生日にはその時期に出るという限定のお酒が義母から届いたり。あとは山口にいる親戚がお酒を送ってくれたりもしますし、両親が山梨在住なので山梨のお酒も飲みますね」

 なんにせよ、ご縁のあるお酒は記憶に残りやすい(ですよね?)。そうでなくても、お国自慢の地酒があるのはちょっと誇らしい気持ちになる、というのはお酒好きならではか。

「ゆかりのある土地に美味しいお酒があって恵まれていると思います。初めて父と一緒にお酒を飲んだときは日本酒の味もわからなかったし、銘柄も覚えていないですけど、お祝いごともあって二人ともご機嫌だったのは記憶しています」

 酒器も肴になれば、思い出話も肴になる。またいい話を聞いて、それを肴に一献。佳肴は尽きないのである。

●INFORMATION

Atelier はなえがお

ゆとりと癒しと笑顔のある生活を提案するフラワーアレンジメント教室。コサージュや手づくり雑貨などの販売も行う。ウエディングブーケ、母の日ギフトなど、各種イベントに応じたオーダーも可能。

●取材・文/笹森ゆうみ

ライター。蕎麦が好きで蕎麦屋に通っているうちに日本酒に目覚め、同時にそば猪口と酒器の魅力にとりつかれる。お酒、茶道、着物、手仕事、現代アートなど、趣味と暮らしに特化したコンテンツを得意とする。