雑味のない旨味を凝縮した最高の一杯を抽出する「アラジン コーヒーブリュワー」

――2023年には「アラジン コーヒーブリュワー」が発売されました。
高橋さん:トースターを発売して以降、ユーザーの方たちのご意見をヒアリングしたところ、「パンに合うおいしいコーヒーが飲みたい」という声が圧倒的に多かったんです。それで、おいしいコーヒーとはなんだろう? と私たちなりに考えたところ、苦みがカギになるのではないかと。苦みを分析してみると「雑味」と言われるコーヒーのアクみたいなものが関係することが判明しまして、雑味を入れずすっきりとした、パンの味わいを損ねないコーヒーを目指して「コーヒーブリュワー」を作りました。構想から4年ほどかかっています。
――具体的にどういった技術が生かされているのでしょうか?
高橋さん:コーヒーをドリップすると、最初はコーヒー独自の旨味成分が出てくるんですが、後半になるにつれてアクが出てきます。一番出汁は香りがいいですが、最後は味がなくアクのある出がらしになりますよね、あの感じです。

高橋さん:通常、コーヒーをドリップすると、前半も後半も全てがカップに注がれてしまうんです。それを専門メーカーでは、おいしい濃いコーヒーを作る工程と、最後をお湯で割る(お湯を注ぐ)工程に分けて仕上げています。アラジンは独自の「バイパスドリップ」技術でこれら2つを分けることで、雑味を入れないコーヒーを実現しました。コーヒーを抽出するルートと、直接カップにお湯を注ぐルートを設けたのが特徴です。
――そこにヒーターの技術が生かされているんですね。
高橋さん:ただ、私たちはコーヒーについては素人だったので、北海道にある「珈琲きゃろっと」というコーヒー豆専門店の焙煎士さんに試作機を持って行って協力していただき、お湯の温度や抽出スピードなどのレシピをプロのご意見を聞きながら作り上げました。何回も通って、ここでも抽出しては飲む、を繰り返しました(笑)。
――「珈琲きゃろっと」さんとはご縁があったんですか?
高橋さん:そういうのはまったく無くて。そちらでは私たちが目指した「差し湯方式」というのを昔から推奨されていて、私たちの考えととても似ていたんです。代表の方と意見交換して意気投合し、ご協力いただけることになりました。
――開発における一番の山場は?
高橋さん:やはりおいしいコーヒーを作るためには、お湯の温度と抽出のスピードが大事なんですが、機械はどうしても冷えてしまいます。また、豆(粉)の保存状態も人によってまちまち。マシーンというのは一定の温度を維持するのは得意ですが、状態が異なる粉に個別対応するのは難しい。そこをどうクリアするかが課題でした。

――確かに保存状態や条件がかなり違いますよね。クリアするためにどのような方法を?
高橋さん:最終的に「予熱」という方法をとっています。お湯を落とす前にスチームを発生させて機械全体を温め、粉にも吹きかけて。アイドリングする感じですね。そうすると粉も活性化して、一定の状態にまで持ち上げてから抽出工程に入るという技術。実はここに辿り着くために、発売を1年延期させていただきました。
――おいしい一杯のために、さらに1年を費やしたんですね。
高橋さん:機器を初めて使う状態がコールドスタート、繰り返し使うのがホットスタートといって、私たちは何回も試飲するので、主にホットスタートで検証を行っていました。その際は「おいしいおいしい」と言っていたのですが、翌朝コールドスタートで飲んでみると、どうも味が変わっていておいしくない。そのことが発売ギリギリで判明し、これではみなさんに「おいしいコーヒーが飲めます」とは言えないと判断して発売を延期し、改良しました。
――豆がどういう状態でもおいしい一杯になるとはスゴい! 商品の反響はいかがですか?
高橋さん:コーヒー好きの方はもちろん、コーヒーが苦手な方から「コーヒーは苦いものだと思っていたけれど、こんなにクリアで飲みやすいんだ」と評価をいただいています。苦みの部分にとてもこだわったので、そういっていただけると何よりうれしいですね

――アラジンの今後の展開予定を教えてください
高橋さん:オーブントースターは多くの方に認知していただいていますので、今後も通年商品としてキッチン周りの商品を強化していきたいと考えています。小物やホットサンドメーカーといったアイテムも含め、キッチンに並ぶ調理機器がすべてアラジンブランドになると嬉しいなという夢を持ちながら、これからも一つずつ取り込んでいきたいと思います。
(取材・文◎松永加奈)
●DATA
株式会社千石 https://www.sengokujp.co.jp
アラジンブランド https://www.aladdin-aic.com/