『みどり鮨』と『地酒や たけくま酒店』との運命的な出会い

『みどり鮨』が地元・神奈川の地酒を多く扱うようになったきっかけは、遠藤さんが代替わりした12年前。当時、いくつかの地酒を試した中で、「いづみ橋」(泉橋酒造株式会社)との出会いが運命を変えたといいます。

「飲んだらとてもおいしくて。詳しくお話を聞きたいと思い初めて酒蔵を訪れたとき、泉橋酒造さんが丁寧に説明してくれて感動しました」と遠藤さんは振り返ります。
早速お酒を店で取り扱いたいと伝えたところ、特約店制度など、お酒の仕入れにはルールが多く、最初は戸惑いの連続。そんなとき、泉橋酒造から紹介されたのが『地酒や たけくま酒店』本店だったといいます。
遠藤さん:当時は『地酒や たけくま酒店』に色々と教えてもらいながら、神奈川の酒を増やしていったんです。

佐藤さん:それから『みどり鮨』さんでは「いづみ橋 恵 青ラベル 純米吟醸」が定番酒となったんですね。社長をはじめ本店の先輩から当時の話はよく聞いています。
泉橋酒造は6代目蔵元・橋場友一さんが1995年に蔵に戻られてから、酒米の栽培、精米、醸造といった酒造りを一貫して行う「栽培醸造蔵」への切り替え、造るお酒全てを純米酒にするなど、蔵に大変革を起こされたそうです。
もともと海老名に根付く農業の文化、それを守ることが酒蔵の仕事と捉え30年も前にいち早く舵を切ったらしいですね。
『みどり鮨』さんの地元に根差し、地元を活かした食文化にこだわる姿勢は知っていたので、企画をお願いするにあたり泉橋酒造のお酒とやりたいなと思っていました。
飲食店が神奈川の地酒を揃えることも、当時この界隈で他にはなかったんですってね。刺激的だったと先輩が話していましたよ。
遠藤さん:うれしいです。でも、最初は神奈川のお酒が売れなくて。なんでなんだろう?だったら神奈川のお酒を増やそう!と思ったのが始まりだったんです。若かったので意地になっていた部分もあると思います笑。
結果、地元の素材、神奈川の地酒にこだわる『みどり鮨』になったので良かったです。おっしゃる通り、神奈川県産にこだわるお店は他にはあまりないので。
佐藤さん:蔵に隣接する酒米の田んぼ。そこで蔵人は四季を通して稲の成長と生き物の営みを目の当たりにしながら酒造りを行っています。相模川に沿った他の地区にも契約栽培の田んぼがあり、同じ品種でも地区の個性が出ますから、そういった違いには蔵に訪れた外国人も関心を示すそうです。
土地の特徴を楽しめるのが地酒なので、何を合わせるかと言えば、まずは同じ土地の食材を合わせてみたくなりますね。あまり調理しないで素材が活かされた料理と。お寿司は最適です!
遠藤さん:昔、石川県に旅行に行った際、郷土料理と地酒のお店がすごくおいしかった。テロノワールというと何か格好いい感じがしますけど、その土地の地酒と郷土料理って合うなと実感したんです。
『みどり鮨』のお寿司と「いづみ橋 恵 青ラベル 純米吟醸」を合わせて――
佐藤さん:言うことないくらい馴染みますね笑。地のもの同士だからそう思うわけじゃなく…お酒自体が単純に美味い。普段販売していると、泉橋酒造のお酒は冷酒よりもアツアツの燗酒にすると膨らんで味わい深いという印象を持たれているようです。もちろんその面もあるし、でもこれは冷酒も旨味があって美味しいですね。
やはり橋場さんが間口を広げようと方向性を変えていったそうです。赤酢の酸もまろやかでお酒のほのかな和柑橘のような酸とケンカせず、このペアリングはずっと飲めるやつです!
横浜界隈で地のものを食べて地酒を飲むなら、『みどり鮨』でしょう。
現在では、『みどり鮨』は神奈川の地酒の魅力を発信する場にもなっています。
『みどり鮨』ではファン垂涎の秘蔵熟成酒も楽しめる?

『みどり鮨』には熟成酒のメニューがあります。「他がやらないことをやる」がモットーの遠藤さんは数年前から熟成酒に注目し、常連さんに勧めているそうです。
「最初は、なんか変なことしはじめたって言われたんですけど、ただお酒を仕入れて提供するだけでなく、付加価値をつけたかったんです。時々、出会うじゃないですか、口開けして寝かされた日本酒。寝かす為に作られた日本酒もあれば、そうでないのもある。でも、熟成された日本酒ってちゃんと寝かせばおいしいぞ!と気づいて勉強したんです」
今でこそ常連さんは熟成酒を頼むことはあれど、当時は、日本酒の20年熟成と聞いても常連さん達は「それって大丈夫なの?」と尻込みする反応。
まずは体験してもらおうと、サービスで20年ほど熟成した大吟醸などを振る舞って浸透させたと言います。
佐藤さん:え、サービスですか!?
遠藤さん:そうなんですよ。安くはないお酒ですが、おいしさを体験していただかないとはじまらないので。それに、手に入りにくいだけで価格設定を高くするよりも、時間経過による付加価値の方が腑に落ちるんです。
佐藤さん:それこそ時間が経たないと味わえない。せっかくお寿司屋さんだし特別な日本酒を飲みたい気持ちってありますよね。その選択肢として熟成酒を揃えたなんて、カッコいい。
そのこともあり、今日は「いづみ橋 純米直汲み たけとんぼ」をお持ちしました。このお酒は春に当店のスタッフが蔵まで汲みに行き、汲み立てと生酒のまま瓶貯蔵で熟成させた秋とで2回販売します。
「直汲み」と言って搾られるお酒を手作業で直接瓶に汲んでいくのですが、春にはガス感もあり溌溂さを、秋には熟成したまろやかな味わいを楽しめる。
一年を通した味の変化で季節の移ろいを感じられるような、泉橋酒造と当店とオリジナル酒です。お持ちしたお酒は秋を越えて今に至るので、さらに味が乗っています。もちろんお燗も良いです。
「みどり鮨」さんの秘蔵熟成酒と比べたらまだまだ若いですけど!
遠藤さん:今サービスで出しちゃうのもったいないかなぁ。もっと寝かせたいなぁ笑
まとめ
『地酒や たけくま酒店』と『みどり鮨』のおいしい関係、いかがでしたでしょうか。引き続き、地域に根付いた酒屋と飲食店のおいしい関係を追いかけます。
次回はどんなお酒とどんな飲食店が登場するか?お楽しみに。
*みなさんの好きなお酒の銘柄を教えてください。好きなお酒の思い出、エピソードなどもあると思います。是非、『好きなお酒の銘柄』を下記のフォームにお寄せください。
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無くなり次第終了!「いづみ橋 純米直汲 たけとんぼ」一杯サービス企画

『みどり鮨』のご協力のもと、お店で「食楽webのinstagram」をフォロー、フォローしている画面を見せると「いづみ橋 純米直汲 たけとんぼ」一杯サービス!
とんぼラベルが印象的な「いづみ橋」と『地酒や たけくま酒店』、とんぼ+たけ=「たけとんぼ」。
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(企画・取材◎ヨネダ商店)