土作りから始まる「土鍋ご泡火炊き」のこだわりが旨さの秘訣

最初に案内されたのは原料選びから始まる土作りの工程。国内外から12種類もの原料を調達し、それぞれの土が持つ性質を理解し、絶妙なバランスで配合することで理想的な土を実現しています。

練る工程で水分量が調整されますが、少なすぎても多すぎても土鍋の焼き上がりを左右するそう。さらにその日の天気、季節の影響も受けるため、熟練の職人がその都度チェックし、土台となる土を完成させます。
日本の町工場の高い技術力が優れた製品を支えている

真空状態で土を練る工程も特徴的で、このプロセスで土の中の空気を完全に抜き去ります。これにより、焼成時に割れや縮みが発生するリスクを抑え、製品の耐久性を高めるとのこと。「練りの技術」を経て、ようやく成形の作業へと移ります。

「一般的な土鍋は、蓋と本体の形状が厳密でなくても問題ありませんが、炊飯器用の土鍋は精密な寸法が求められます。土鍋は製造過程で乾燥や焼成によって縮む特性があるため、機械と合わせるために品質を均一化することが大きな課題となります」(廣田さん)

続けて、「土鍋を電気製品に対応させるためには、寸法管理や製造工程の課題を一つずつクリアしなければなりませんでした。厚みの誤差は±0.3mmと精密さが必要不可欠でしたので、約2年の研究期間を経て量産が可能になりました」(廣田さん)

1回目の焼成の工程では、約1300度の高温が維持されている大きな窯で一気に焼き上げられます。高温で一気に焼き上げることで、土鍋が持つ強度や耐熱性が増すそう。焼成後の製品は冷却されたのち、手作業で一つ一つ寸法や異物などのチェックが行われます。

繰り返し行われる品質チェックがものすごく厳格で、寸法、底の厚み、表面の異物の有無など、多項目に渡りチェックが行われます。不良品は徹底的に取り除かれるため、約1割程度はロスがでるそう。ロスの一部はコンクリートの混ぜ材に再利用されるそうで、資源のリサイクルが行われています。

釉薬を塗り、焼き上げたのち、底面にIH発熱体シートを貼り付けます。こちらも高い技術が必要で、ズレや気泡が入らないのはもちろん、スピーディーさも求められる作業です。
こうして完成した土鍋は、順々に出荷されていきます。土鍋そのものは5年間保証があり、割れたり、欠けてしまったりした場合でも、交換対応をしてもらえるのも魅力です。
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「土鍋ご泡火炊き」の内釜は、土鍋炊きの美味しさをもっと手軽に楽しんでほしいという思いから誕生した職人の技術の結集。「ご飯がおいしく炊ける」という土鍋に対する従来通りのイメージのまま、工業技術が融合した唯一無二の製品なのです。

工場見学を通して、日本の町工場が持つ高い技術力に驚かされました。それと同時に、高度な技術ゆえの後継者不足も課題のように感じました。熟練の職人が持つ感覚や経験は、機械に代替できない部分。この素晴らしい技術が受け継がれるよう、私たち消費者が製品を手に取ることで伝統を支える一助となるのかもしれません。
(撮影・文◎亀井亜衣子)