BEAMSの名物ディレクターが見つけた群馬の銘品「くるみ籠」の魅力【フーテンの寅みやげ】

BEAMSの名物ディレクターが見つけた群馬の銘品「くるみ籠」の魅力【フーテンの寅みやげ】
食楽web

●BEAMS JAPANの名物ディレクター・鈴木修司さんは企画や仕入れを行う関係上、東西南北、日本の地方を巡る日々を過ごしています。尊敬する人物は『男はつらいよ』の車寅次郎。寅さんのように年の1/3は旅の空という鈴木さんが、旅先で見つけた各地のお土産をセレクト。そこでしか買えない銘品を「フーテンの寅みやげ」としてご紹介します。

 こんにちは、鈴木修司です。長い夏も過ぎ去って、そろそろ厚着して寒いところに旅したくなる季節ですが、今回の旅先は“上州”、今で言うところの群馬県です。

アニメ「千と千尋の神隠し」の“油屋”のモデルのひとつとして有名な『積善館』
アニメ「千と千尋の神隠し」の“油屋”のモデルのひとつとして有名な『積善館』

 先日、新たな企画のための商談で群馬県内をぐるりと廻ってきました。以前より訪れてみたかった四万温泉(しまおんせん)にやっと立ち寄ることができました。群馬県の北西部に位置し、四万川沿いにひっそりと栄える温泉地ですが、噂に違わぬ名湯でした。

今回の宿泊先である『中生館』
今回の宿泊先である『中生館』

 私が宿泊したのは四万川ダムのほど近く、温泉地の中でも最奥にある宿『中生館』。奥まり過ぎていて道に迷いましたが、その甲斐あって、とても静か。部屋に入ってみると、窓のすぐ下が渓流で、谷間でせせらぎの音が反響して、一晩中その音を楽しみながら眠ることができました。

2階の部屋から眺める、渓流沿いの秘湯
2階の部屋から眺める、渓流沿いの秘湯

 この『中生館』、何よりもお風呂が素晴らしい。内風呂も良いのですが、なんと言っても渓流沿いの露天風呂が最高。内風呂からタオル一枚持って歩いて行くのですが、開放感と清涼感がハンパありません。これぞ露天風呂! と思わず唸ってしまう心地よさ。このお風呂に入るためだけに四万温泉を再訪しても良いと思うほどでした。

目が覚めやらぬうちに浸る朝風呂(内風呂)も最高です
目が覚めやらぬうちに浸る朝風呂(内風呂)も最高です

 そして翌朝、短時間でも温泉街を散策しながら、群馬ではポピュラーなおやつ、“焼まんじゅう”をパクリ。知らない人のために説明すると、餡の入っていない酒饅頭に、醤油ベースの甘辛いタレを塗って炭火で焼いたような、群馬の素朴なソウルフードです。

群馬名物の“焼まんじゅう”
群馬名物の“焼まんじゅう”

 これを食べるのは実は私は初めて。正直なところあまり見た目には惹かれなかったのですが、ひと口頬張ってみて、良い意味で後悔。見た目とは裏腹に、あっさりしながらも味わい深い逸品でした。群馬にはいたるところに焼きまんじゅうの店があるので、現地を訪れたらぜひ食べてみてください。

JR吾妻線の中之条駅
JR吾妻線の中之条駅

 次の目的地に向かう途中、立ち寄ったのが個人的に思い入れのあるJR吾妻線・中之条駅。数年前に訪れた際、駅前の食堂に貼られた古い新聞記事を見て気付いたのですが、実はここ、私が敬愛する映画『男はつらいよ』の主人公・車寅次郎が立ち寄った場所です。

 特に『男はつらいよ』の中でも名作と名高い第25作「寅次郎ハイビスカスの花」の作中、浅丘ルリ子演じるマドンナ“リリー”と寅さんが再会するバス停があるのが、こちらの中之条町なのです。バス停で偶然出会った際の2人の掛け合いが絶妙で、とても素晴らしいシーンなので、少しでも気になる方はぜひ映画をご覧ください。

道の駅で見つけた「くるみ籠」に一目惚れ

中之条にある道の駅「霊山たけやま」で手に入れたクルミの樹皮のカゴ
中之条にある道の駅「霊山たけやま」で手に入れたクルミの樹皮のカゴ

 そして、ここからが本題です。だいぶ前置きが長くなってしまいましたが、群馬の“フーテンの寅みやげ”として今回ご紹介するのは、“山の幸”です。山の幸といっても食べ物ではありません。クルミの樹皮を丁寧に編んだボックス型のカゴです。

 山深く豊かな土地ならではの、貴重な素材を使った手仕事の一品。買った場所は、中之条にある道の駅「霊山たけやま」に立ち寄ったとき、偶然見つけた逸品。定価は8000円だったのですが、6000円くらいに値引きされていて、その佇まいに惹かれて即購入しました。

 実は私、日本各地のカゴをコレクションしています。特に地元で採れた樹皮や蔓などで編まれたカゴは素材感と佇まいが素敵。手仕事で編まれたカゴには、作られる地域の気候や風土が如実に反映されていることもあり、ついつい旅先で思い出と共に持ち帰ってきたくなるのです。

全国各地で仕入れたカゴ・コレクション
全国各地で仕入れたカゴ・コレクション

 青森県や秋田県などの東北地方でよく見られる樹皮製のカゴが、北関東の群馬にもある理由は、この辺りは標高も高く気温も低いからこそ、だと思います。貴重なコレクションがまた増えました。

今回、購入した「くるみ籠」。椅子にちょこんとのった様子も素敵
今回、購入した「くるみ籠」。椅子にちょこんとのった様子も素敵

 ちなみに群馬の名産品として有名な工芸品として「入山メンパ」と呼ばれる、薄い木の板で形作られる小判型のお弁当箱もあります。いわゆる“わっぱ”ですが、これも素敵なものなので、興味のある人はぜひ調べてみてください。

おまけ

カツカレーラーメン
カツカレーラーメン

 最後に、中之条駅のロータリーの目の前にある食堂『ほづみ とんかつ店』でいただいた “カツカレーラーメン”がかなり美味しかったことも付け加えておきます。ぜひ食べてみてください。美味しいですよ!

●DATA
道の駅 霊山たけやま
住:群馬県吾妻郡中之条町大字五反田222-1
TEL:0279-75-7280
営: 9:00~16:30(※12月~3月は15:30まで)
※1月2日・3日は9:00~14:30
休:水曜・年末年始

ほづみ とんかつ店
住:群馬県吾妻郡中之条町伊勢町820-3
TEL:0279-75-2797
営:11:30〜20:30
休:水曜

●著者プロフィール

鈴木修司(すずきしゅうじ)|BEAMS JAPANクリエイティブディレクター

1976年、三重県松阪市生まれ。年間120日近くを旅に費やし、日本各地の様々な場所で魅力的なモノ・ヒト・コトを発掘。大学などで講師を務めることも。著書に『銘品のススメ』、監修書籍に『都道府県おでかけ図鑑』などがある。