レスリングの現役世界チャンピオンに訊く体づくりのための「食事」の方法とは?【アスリートの勝負飯・成國大志さん】

レスリングの現役世界チャンピオンに訊く体づくりのための「食事」の方法とは?【アスリート飯・成國大志さん】
食楽web

●トップアスリートといえば、肉体を限界まで鍛え、食事も休養もストイックにこだわっているイメージがありますが、実際、普段はどんなものを食べているのでしょうか? 今回はレスリング・フリースタイル70kg級の世界チャンピオンである成國大志(なりくに・たいし)さんに、体作りのための「食」について伺いました。

 成國大志さん(25歳)は、5歳からレスリングを始め、小学生時代に全国大会で5回優勝、中学時代に全国3連覇、高校ではインターハイ王者にもなり、大学では全日本3回優勝を成し遂げてきたエリート選手。そして昨年(2022年)には、セルビアで開かれた世界選手権に初出場し、いきなり世界一に。現在は、子どもたちのレスリングの指導を行う傍ら、大学のコーチも努めながら選手生活を送っています。

成國大志/1997年東京生まれ。小学生時代に全国大会で5回優勝、中学時代に全国3連覇、高校ではインターハイ王者になり、大学では全日本3回優勝。そして昨年(2022年)には、世界選手権に初出場し世界一に輝く
成國大志/1997年東京生まれ。小学生時代に全国大会で5回優勝、中学時代に全国3連覇、高校ではインターハイ王者になり、大学では全日本3回優勝。そして昨年(2022年)には、世界選手権に初出場し世界一に輝く

――普段の練習内容は?
 毎日、仕事があるので、自分のトレーニング(筋力・瞬発力)の時間は夜の2時間くらいですね。レスリング自体の練習は週2回程度。少ないと思われるかもしれませんが、効率を重視しています。筋トレならオールアウト(限界まで筋肉を追い込む)が基本。とことん自分を追い込むのは得意なので、たまにトレーニングルームで1人で失神してることもありますよ(笑)

――カラダ作りで心がけていることは?
 練習メニューも食事も休息もすべて自分で勉強し、自分に合うように考え抜くことを心がけています。子どもの頃は、コーチやトレーナーなど大人に与えられるメニューをこなすだけでした。しかし大学生の頃から、すべてイチから自分で考えるようにしたんです。するとカラダ作りもレスリングの内容もグッとよくなり、よりストイックに実践できるようになりました。

所属する『ゴールドキッズ』のジムにて。現在は100名以上のキッズのコーチを努めている(食楽web)
所属する『ゴールドキッズ』のジムにて。現在は100名以上のキッズのコーチを努めている(食楽web)

――具体的に普段はどんな食生活なんですか?
 基本中の基本ですが、三大栄養素のたんぱく質、脂質、炭水化物(糖質)はバランスよく摂ります。あとは、食物繊維が豊富な食材(野菜・ワカメ)や発酵食品(納豆・キムチ)なども必ず摂ります。また、糖質として主にご飯(米)もしっかり食べます。その他、プロテインも欠かしません。運動前には筋肉がエネルギーに変わらないためのプロテイン、トレーニングの30分後にはリカバリーのためのプロテインも飲みます。

――レスリングは計量がある競技ですが、減量中は?
 現行のレスリングのルールでは、試合当日の朝に計量するため、多くの選手が自分の適正体重に近い階級に出ています。僕の場合は普段の体重が68kgで、階級は70kg級。対戦相手の体が大きいことが多いので、減量よりむしろパワーアップが必要。なので栄養のあるものをとにかくバランスよく食べて、限界まで練習をするというのが基本です。

――食事で特に気をつけていることはありますか?
 食材の質についても考えて摂ります。とくに、僕の場合は油に気をつけていて、積極的に「オメガ3脂肪酸」を豊富に含むアマニ油、えごま油などを摂っています。サラダをはじめ、味や香りがほとんどないので、納豆や味噌汁など、何にでもかけています。

 ご存知の人も多いと思いますが、「オメガ3脂肪酸」は悪玉コレステロールや中性脂肪を減らすと言われていて、ダイエット中の方にも人気のオイルです。また、この脂肪酸は、カラダの脂肪をエネルギーとして変換しやすくしてくれると言われているので、アスリートにとっては、試合や練習の中での持久力向上やパワーアップにもつながると思います。

成國さんが積極的に摂っているという、アマニ油やえごま油、MCTオイルなど
成國さんが積極的に摂っているという、アマニ油やえごま油、MCTオイルなど

 また、オイルだけでなく、僕はニチレイフレッシュの『あまに鶏』という鶏肉もよく食べます。この鶏肉は、このオメガ3系脂肪酸を豊富に含んだ“アマニ”成分を加えた飼料で育てた『亜麻仁の恵み』というシリーズのお肉です。これがやわらかくて食べやすく、美味しいので、毎日の食事で大活躍しています。

ニチレイフレッシュが出している「あまに鶏」。成國さんは、同社がアスリートを応援するプロジェクトに自ら応募して当選したそう
ニチレイフレッシュが出している「あまに鶏」。成國さんは、同社がアスリートを応援するプロジェクトに自ら応募して当選したそう

――ジャンクフード、たとえばラーメンなどは食べない?
さすがにラーメンは食べませんね(笑)。でもハンバーガーや牛丼などは食べますよ。それも本当にごくたまにという感じ。練習もトレーニングもそうですが、カラダ(筋肉や神経)はわりとすぐに覚えて、進化がなくなります。だから、毎日違う練習メニューを考えて狙った筋肉の増量やあらゆるパフォーマンスの向上を目指していくわけです。

 食に関しても同じで、ジャンクフードを日常的に食べてしまうと、カラダがそれを覚えてしまいます。すると結果的に常習化して栄養バランスが崩れ、“勝つためのカラダ”から遠のきます。なので、ジャンクフードは日常的には食べません。もちろん食べたい気持ちはありますが(笑)

まとめ

 最後に、「思い出に残っている勝ち飯ってありますか?と聞いたところ、「実は甘いものが好きです。一番好きなのはパンケーキ。世界選手権で優勝して日本に帰国したときに、真っ先に食べたのがパンケーキでした。食べながら、しみじみ、オレ世界チャンピオンになったんだなぁと実感が湧いてきましたね。また今後もさらなる高みに昇り、パンケーキを食べるのが夢です」と教えてくれました。

 さすが世界チャンピオンだけあって、食生活もストイックそのものですが、「オメガ3脂肪酸のオイル」を積極的に摂る、適度にカラダを動かす、そして、ジャンクフードを少し控える、なら誰にでも真似できそうですね。

(取材・文◎土原亜子)