ゆずの香りがほのかに漂う繊細なおいなりさん|『おつな寿司』(六本木)

六本木の東京ミッドタウンの斜向かいにある『おつな寿司』。江戸前寿司の名店として知られるお店ですが、お土産用のおいなりさんも大人気。秘伝のお出汁で煮込まれたお揚げは、1枚1枚丁寧に裏返し、一晩置いてなじませています。この「裏返し」が『おつな寿司』のおいなりさんの肝で、テレビ業界では「『裏』番組を食う縁起モノ」として、差し入れの定番なのだとか。今回は、8個入りの「いなり寿司」(1160円)を実食。

サイズは小ぶりですが、その分、お揚げがたっぷり使われており、シャリよりもお揚げの味わいが強いです。甘さが際立つ味ですが、やや酸味のあるシャリと、そのシャリに加えられたゆず皮がキリッと全体を引き締めています。職人技を感じる繊細な味わいで、今回食べ比べた10店のうち、最も洒落た感じのするおいなりさんでした。
口紅をつけたまま食べられる棒状のおいなりさん|『西麻布いなりや呼きつね』(六本木)

さて、いよいよ最後です。同じく六本木にある『西麻布いなりや呼きつね』。その名の通り、西麻布にある名店の六本木支店ですが、芸能界ではよく知られた名店です。ヨックモックのシガールをふくよかにしたような、小ぶり&棒状のおいなりさんで、女優さんが口紅をつけたまま食べられるよう配慮してできた、とも言われています。いただいたのは「いなり寿司」(1600円)。

このおいなりさん、お揚げの味が極めてサッパリしており、どちらかと言うとシャリの酸味のほうが立っています。しかし、食べ進めていくと、このお揚げの繊細な味わいが口の中に徐々にじわじわと広がっていきます。この変化が楽しい。六本木や西麻布でおいなりさんを買う際には、『おつな寿司』と両方買って食べ比べるのも楽しそうです。
まとめ

そんなわけで、東京のおいなりさんの名店を10店、食べ比べしながらご紹介してきました。筆者個人的には、日常食的に楽しむのなら、滝野川の『川直氷室』が一番美味しいと思いました。
贈答などにも使えるオシャレ系おいなりさんでは六本木の『おつな寿司』。春先の進物の候補にしたいと思います。
もちろん、これ以外の各店も「名店」の名に相応しく、それぞれ個性的で美味しいのはもちろんです。ぜひ自分好みのおいなりさん探してみてください。
(撮影・文◎中西ふみえ・松田義人)