元祖たらこスパゲティってどんな味?

『壁の穴 渋谷本店』は、渋谷の道玄坂交差点そばの路地裏にあります。めまぐるしく移り変わる渋谷の町並みですが、このお店の前の行列風景は相も変わらず、筆者が訪れた日も満席でした。
店頭に到着したら、まずは外待ちです。メニューを渡されるので眺めていると、「元祖たらこスパゲティ」の誕生秘話が書いてありました。いわく、ある日お客さんが「スパゲティに載せてくれ」とキャビア(言わずと知れた高級食材。チョウザメの卵の塩漬け)を持ってきたのがきっかけだそうで、これをヒントにキャビアをたらこに変えて作られたとのこと。知りませんでした。

カウンターに案内されると、卓上に「トッピングリスト」があり、パスタに好きなトッピングを載せて、オリジナルパスタにすることもできます。
今回は、家でもよく載せる「しそ」(55円)をトッピングすることにしました。しかし、考えてみれば、たらこに海苔、納豆、しらすなどなど、本場イタリアのスパゲティにはないトッピングが今では当たり前になっていますね。そして待つことしばし。登場したのがこちらです。

ベビーピンクのたらこの粒々が、スパゲティ1本1本にまんべんなくまとわりついており、なんとも優しい色合いです。これまで幾度となく「たらこスパゲティ」を見てきましたが、これが元祖かと思うと感慨深く、またやたらと美しく見えます。
フォークでスパゲティをくるくるっと巻き上げ、食べてみると……これはやっぱりスゴい!

スパゲティのなめらかな口当たり、そしてたらこソースのやわらかい旨味。さらにスパゲティを噛んだ時の心地よい弾力。噛み締めていくと、たらこソースの旨味だけでなく、麺自体からもまろやかな味わいを感じます。まさに口いっぱいに幸せが充満するような美味しさです。
当然ながら、家で作るたらスパとは段違いの美味しさ。さらに今までいろいろなお店で食べた「たらこスパゲティ」とも違っていて、なんといいますか、どこか気品あふれる丁寧さを感じる味がします。美味しすぎてあっという間に完食し、おかわりしたくなるくらい!

お店の壁に目をやると、美味しさの秘密として昆布粉を使っていることや、スパゲティの茹で時間を試行錯誤して本場イタリアのアルデンテを再現した話、はたまたさまざまな和風スパゲティをお客さんとともに作り出してきた逸話が書かれたボードがたくさん飾ってあるので、それを読むだけでも楽しいです。
検証結果
「元祖たらこスパゲティ」は文句なしに美味しかったです。歴史を知るだけでも楽しくて、普段食べているたらスパへのリスペクトがさらに深まりました。そして、この味を家でもなんとか再現できないものかとふつふつと料理欲も湧いてきました。
ちなみに『壁の穴』では、たらこスパゲティと並んで、「元祖あさりスパゲティ」もあり、これは江戸の名物・深川丼にヒントを得て創作されたあさりを使ったメニューなんですって。うーん、これも食べてみたいですねえ。ほかにもさまざまなトッピングの和風スパゲティが多数あるので、ぜひお気に入りの和製パスタを探してみてください。
(撮影・文◎土原亜子)