キツネ色の美しいフォルムの半身揚げに感激!
注文したのは「鶏聖揚げ定食」。そう、こちらでは素揚げのことを“鶏聖揚げ”と呼びます。店名を冠した料理ということで、こだわり具合がうかがえますよね。
待つことしばし。揚げたてのいい香りを漂わせた半身揚げが、ご飯、味噌汁、漬物、そして味変用のハニーマスタードソースとともに運ばれてきました。こんがりキツネ色の半身揚げ。ふっくらとしたそのフォルムを見ていると、すぐにでもかぶりつきたくなります。からあげ好きにとってはもはや“金塊”にも値するようなルックス。
足部分を手で持ち、まずは鶏肉に向き合います。断面から立ち上る湯気とあふれる肉汁。矢も楯もたまらず肉に食らいつきます。表面の皮の部分の唇に触れただけで「あ、これ絶対に美味しいヤツだ!」と筆者は直感しました。パリッパリの皮は見事な揚げ具合で、塩味と肉の旨みがよく染み込んでいるのが唇に触れただけでわかるのです…! 歯をめり込ませていけば、直感は確信に変わります。肉汁たっぷりのしっとりとした肉。旨みが口の中で弾けるように広がります。
醤油やニンニクなどで味付けしたからあげと、ご飯との相性のよさは周知のとおりですが、しかしこの半身揚げのように、シンプルに“塩+肉の旨み”で食べるご飯もまた格別。こういう定食、全然アリです。特に骨の周辺部分の肉の美味しいことと言ったら…。骨の中の旨み成分がよく染み出しているのがわかります。
添えられたハニーマスタードソースはほんのりと甘く、辛さはほとんど感じません。「テイクアウトだとお子さんが食べることもあるので、刺激の少ない味にしています」と店主の石田さん。肉の味を邪魔しない、ちょうどいい味わいのソースで、筆者は特にムネ肉部分と相性がバツグンだと思いました。
とにかく半身揚げのボリュームは圧巻のひと言。お昼にこんなに食べていいのか? と思ってしまったほど。ランチの定食ですが、満足感は十分です。
ホルモン焼き用のタレを使ったザンギも絶品
この日は店主・石田さんの故郷である北海道のご当地からあげ・ザンギも味わってみました。こちらは半身揚げとは打って変わってガッツリ濃いめの味付け。聞けば、石田さんは以前、ホルモン焼きの店を営んでいたそうで「ホルモン焼き用のタレを味付けに使っています」と教えてくれました。
なるほど、そのせいか一般的な醤油ベースのものよりも深みがあるように感じます。肉にはほどよい弾力があり、歯で圧をかけるごとに閉じ込められた旨みが搾り出されてくるよう。軽くおこげ状態でガリッとした歯ざわりの衣と、肉がシャッフルされていき、噛めば噛むほど美味しさが加速していきます。
定食の味噌汁の具材にもこだわりあり
特筆すべきは定食の味噌汁。これがまた美味しいのなんの。この日はえのき茸入り。具材は日によって変わり、舞茸の味噌汁のときもあるそうです。「できるだけワンパターンにならないよう、いろいろと考えていますよ」と石田さん。
ちなみに、この「鶏聖揚げ定食」は数量限定。石田さんにその理由を聞くと、「揚げ時間が20分ほどかかってしまうので、お昼の忙しい時間帯にお客さんをお待たせするのが申し訳なくて」と話します。ちなみに半身揚げはテイクアウトもあるので、食べてみたい人はそちらを利用するのもアリですよ!
●SHOP INFO
店名:鶏聖
住:東京都墨田区墨田4-47-11
TEL:03-6657-3236
営:11:30~18:00
休:日・祝
●著者プロフィール
松本壮平
ライター・編集者。一般社団法人日本唐揚協会認定カラアゲニスト。生まれも育ちも「からあげの聖地」である大分県中津市。美味しいからあげを求めて東奔西走する「から活=からあげ探索活動」に明け暮れている。