東京都千代田区平河町。最高裁判所や国立劇場、国会議事堂にほど近いこの地にあるフランス料理店『味館トライアングル』。演出家の蜷川幸雄氏が生前足繁く通い、政財界の要人や皇室もよく訪れるという創業34年のレストランだ。
そう聞くと、なんだか敷居が高そうなイメージだが、決してそんなことはない。都心のど真ん中だからこそ逆に静かなこの街に、ひっそりと、しかししっかりと土地に根付いて佇む店構えは、どんな客も温かく迎え入れてくれる、まさに“街のレストラン”だ。その証拠に、ディナーコースは3,800円(税・サ料別)から、ランチはアラカルトであれば1,730円(税込)と、意外なほどリーズナブル。
そんな『味館トライアングル』には、常連でなくともわざわざ行ってみたくなるメニューがある。それが、季節ごとに変わる旬のフルーツを使ったデザートだ。オーナーシェフの佐藤豪さんが生み出す一風変わったデザートは、食材にこだわり、目を引く見栄えにもこだわったものばかり。10月2日から提供されるのは「柿フライアイス」。文字で見ればすぐに分かるが、聞いただけでは思わず牡蠣フライと間違ってしまいそうなこのデザート、読んで字のごとくフルーツの柿を揚げるかソテーしたという、なんとも風変わりな一品だ。
使う柿は、山形県庄内地方産の“庄内柿”。平べったく、上から見ると角型で種のないこの柿は、山形出身の佐藤シェフが、秋の味覚にぴったりと考え取り入れたという。
「固さはあるけど甘みもあるのが庄内柿です。夏に出していたスイカのケーキもそうですが、いつも、旬の食材を使ってケーキ屋さんには売っていないデザートを作ろうと考えているんですよ」
バターでソテーされた柿は、ほどよく熱が入りやわらかく、控えめでこっくりとした甘さに。秋らしい落ち着いた味わいだ。器も、柿の皮を剥き中をくり抜いたもので作ってあり、そのまま食べられる。こちらは何も手を加えていないため、庄内柿が持つ甘さを楽しめる。そもそも火を通した柿なんて珍しいうえに、柿にありがちなえぐ味のある甘さがなく、まるごと庄内柿を味わえるオリジナルなデザートに仕上がっている。ちなみに柿の上にのるバニラアイスクリームは、バニラの香りと味をしっかり感じられる甘さ控えめな自家製。少し溶けたバニラアイスを柿フライに絡ませて食べるのがオススメだ。
この「柿フライアイス」、11月初旬(予定)までの期間限定で、ランチのアラカルトには必ず付いてくる。ランチメニューも、長年オリジナルにこだわり続けてきた佐藤シェフらしい、フランス料理と和を融合させたメニューばかり。「和風オムライス あんかけ」は、コンソメで炊き込んだライスに野菜をたっぷり使った淡い塩気のあんがかけられたもので、別添えで付いてくる塩昆布をひとつまみふりかけていただくと、疲れた身体に染み渡るやさしい味わいに思わずほっこり。
最後にコーヒーかハーブティーといっしょに「柿フライアイス」を。もちろん写真映えもバツグンだ。見た目も味も“秋”らしいデザートを都心の小さなレストランでいただく。特別な日ではなく、日常でこそ味わいたい、通いたくなる町のレストランの隠れた逸品だ。
(取材・文◎エンドウヒデカズ 撮影◎園田昭彦)
●SHOP INFO
店名:味館 トライアングル
住:東京都千代田区平河町1-3-7 109 アルタ平河町ビル1F
TEL:03-3239-6488
営:ランチ 11:30~14:00(LO.13:30)/ディナー 17:30~22:00(LO.21:00)
休:日曜