食べ応え十分! タレがしっかり絡んだ山盛りの「天丼」

目の前に現れたのは、丼の上に天ぷらが山のように盛り付けられた天丼。早速計測です。直径16cmの丼に高さ約14cm、重さは724g(器の重さを除く)。味噌汁やサラダなどを入れて1kg弱、といったボリュームです。
天ぷらは小エビのかき揚げ、キス、エビ、イカの4種に季節の野菜。揚げたてをつゆにくぐらせてから盛り付けています。

早速一口! 注文を受けてから揚げるので、熱々でふわふわ。最初にタレの甘辛の味が、後からキスやエビなど、素材の美味しさが口の中に広がってきます。見た目は濃い茶色なので味が濃いのかと思いきや、意外とスッキリした味わい。甘さも塩気も程よく、揚げ物のしつこさは一切感じられません。ふわっとシャキッと、ふわっとほろっと、などそれぞれの食感も楽しい。やはり、プロの作る揚げたての天ぷらはひと味もふた味も違います。
そしてゴハンは山形の米。これがもっちりとしていてほんのり甘く、天ぷらとの相性がいい! 口の中がタレの味に染まったところで、サラダでさっぱり、そして味噌汁でスッキリとリセット。改めて天ぷらとゴハン。このループ、永遠に続けられそうな気がする。サラダや味噌汁も含め、絶妙なバランスになっています。

そして、この天丼の中で一番存在感のあるかき揚げ! タレを吸ってふっくら、手のひらサイズのかき揚げは、かき揚げ一口、すかさずゴハン一口、うまい~。ってじわじわと気持ちが満たされていきます。エビの香ばしさと衣のふっくら感、タレの程よい甘辛がたまりません。
店の一番人気、旬を感じる「季節の天丼」

そして、『天三』のもう一つのオススメが「季節の天丼」。店一番の人気丼は、その名の通り、旬の食材を天ぷらにした季節感のある丼。この日の内容はしその葉で包んだホタテ、キス、エビ2本と野菜。「暑さが本格的になってきたら、穴子やエビ、夏野菜に変わりますね」と店主。
2人で来店したお客さんが、一人は「天丼」、もう一人は「季節の天丼」を頼むケースも多いそうです。

天丼になくて季節の天丼にはあるものの一つが、この日は「ホタテ」。大ぶりのホタテをシソの葉で巻き、薄く衣をつけて揚げたものです。これがさっぱりしていて美味しい! シソの爽やかな香りが口いっぱいに広がります。「季節の天丼はうちの中でサービスメニュー。旬のものを美味しく食べていただきたいですね」と店主。
ちなみに揚げ油は、綿実油&ごま油のミックス。ごま油はあえて薄口のものをセレクトしていて、香りが強くならないように配合しているとのこと。

店主が「せっかくだからこれも食べてみて」と出してくれたのが稚鮎の天ぷら。1つ250円前後です。「春~初夏の食材だけれど、最近では7月ぐらいまではあるかな」とニッコリ。頭からガブッといくと、ほろ苦さと骨までまるごといける柔らかさがたまらないっ!
そのままで一口、そして塩をちょっとつけて一口。天ぷら屋さんの楽しみの一つって、季節感あふれる粋なものを、程よい量で味わえることですよね。その日、店が仕入れたもの次第の一期一会感。自宅天ぷらやチェーン系の店ではなかなか出会えない、期間限定の美味しさに、思わずにやけてしまいます。

緊急事態宣言中の営業時間は昼のランチタイムのみ、夜はテイクアウトの対応になります。なので「上野や浅草、合羽橋に遊びに行くついでに、うちによっていただければ」とのこと。おうち時間が増えて本格的な調理器具が欲しい、なんて時に、合羽橋でふらふらして、『天三』でランチ、というのも良いですね。
宣伝や話題性からではなく、職人さんを腹いっぱいにしてあげたいという気持ちから半世紀より前に生まれた『天三』の大盛り。一説によると某牛丼チェーン店の大盛りが約430g、特盛が約490g。それに対して、天三の大盛は724g。季節の天丼は普通盛で535gなので、普通盛りでも某牛丼チェーン店の特盛より多め。なので、初めていく場合はまずは普通盛りから、がおすすめです。
揚げたてをタレにドボンと漬け込むため、サクサクではなく、しっとりふわふわの食感が楽しめる「天丼」は、また季節が変わった時にきっと食べに来たくなる美味しさ。アットホームな雰囲気の居心地のいいお店でした。
(取材・文◎いしざわりかこ)