未知の組み合わせ? 生ハム×燗酒にこだわる『ワインと燗酒Ombra』(亀戸)へ行ってきた

未知の組み合わせ? 生ハム×燗酒にこだわる『ワインと燗酒Ombra』(亀戸)へ行ってきた
食楽web

 センベロ文化が根付く東京・亀戸に、遠方から訪れる人が後を絶たない異色のバーがあります。亀戸駅から徒歩8分ほど、亀戸天神の参道から路地を1本入った場所に店を構える『ワインと燗酒Ombra』がそれ。こだわるのは自然派ワインと燗酒、そして生ハム。なかなか見ない組み合わせの三つ巴ですが、これらには実は共通項が多いと店主の安西さんは話します。

自慢の生ハムはプロシュット、コッパ、パンチェッタ、グアンチャーレ、ソプレッサなど様々な部位を揃えています
自慢の生ハムはプロシュット、コッパ、パンチェッタ、グアンチャーレ、ソプレッサなど様々な部位を揃えています

「うちは生ハムの美味しさを伝えたくてオープンしました。生ハムとワインは生まれ故郷が同じなので、相性のよさは誰もが知っていますよね。でも、ワインも燗酒も旨味が強い酒であるという共通点があるんです。そして、燗酒を飲んで口の中の温度を上げた後に生ハムを食べると、ハムの脂が口の中でやわらかくとろけるんです」(安西さん)

「ハム盛り(大)」2500円は5種の部位入り
「ハム盛り(大)」2500円は5種の部位入り

 前職はイタリアからワインや食品を輸入する企業で働いていた安西さん。そこで感動を覚えるほど美味しい生ハムに出合ったそうです。それが「カルマーコ」の生ハム。イタリア北東部の生ハムの一大生産地・エミリア=ロマーニャ州で豚の飼育からハム作りまでを一貫して行う生産者の生ハムです。完全放し飼いで育てられる幻の黒豚と呼ばれるモーラロマニョーラを自らの手で熟成させた生ハムは旨味が強く、野趣にあふれながらとろけるような口どけがあるといいます。その時の衝撃と感動を伝えたいと自身の店をオープンしたのだそう。

スライサーで生ハムを薄く薄くカットしていく
スライサーで生ハムを薄く薄くカットしていく

 こだわって作られた生ハムは、スライサーで向こうが透けて見えるほど薄くスライスして提供するのも『Ombra』の真骨頂。「生ハムは薄ければ薄いほど美味しい」と安西さんは言います。

燗は60度の高温でつけます。冷酒は置いておらず、燗酒のみというところからもそのこだわりが感じられます
燗は60度の高温でつけます。冷酒は置いておらず、燗酒のみというところからもそのこだわりが感じられます

 合わせる日本酒は、昔ながらの造り方を守り、完全発酵させた酒。そんな造りの酒だけが燗酒に向いていると安西さんは言います。

この店に来て燗酒の魅力に気が付く人も多いんだとか
この店に来て燗酒の魅力に気が付く人も多いんだとか

「僕は人が計算して造り込んだ酒には興味がありません。自然界に一度ゆだねて醸し切った酒にこそ本来の旨味があると考えています。ワインも同じで、自然派と呼ばれるものだけを取り扱っています。ブドウの皮の下の果肉は一番美味しく、酵母が多い部分です。皮を取り除かず、すべての果肉を使ってしっかりと発酵させたワインは、飲んだ後に深い余韻を与えてくれるんですよ。僕は、飲めば飲むほどつまみが食べたくなって、食べれば食べるほど飲みたくなる酒がいい酒だと思っています。そして完全に発酵させた醸造酒は次の日には絶対に残りません」

十旭日の「鏡草 生酉元(きもと/酉元は本来1つの漢字。酉偏に元)純米」850円。米の甘いふくらみを感じられる1杯
十旭日の「鏡草 生酉元(きもと/酉元は本来1つの漢字。酉偏に元)純米」850円。米の甘いふくらみを感じられる1杯
食事と寄り添ってくれる板倉酒造の「無窮天穏」950円は、食中酒にぴったり
食事と寄り添ってくれる板倉酒造の「無窮天穏」950円は、食中酒にぴったり

 これからも「“旨い”の新しい扉を開いていきたい」と食に対して貪欲な姿勢を見せる安西さん。ここを訪れたらまずは燗酒と生ハムを注文してみてください。未知とも思われるその組み合わせは、食べ、飲んだものにしか分からない感動をもたらしてくれるはずです。

 食の新たな扉を開くキーワードは、自然派ワインと燗酒、そして生ハムにあるのかもしれませんね。

(文◎千葉泰江)

●SHOP INFO

店名 外観

店名:ワインと燗酒 Ombra

住:東京都江東区亀戸3-59-19
TEL:090-4669-0888
営:17:00~24:00
休:日

※当記事は『食楽』2019年冬号の記事を再構成したものです