絶品チャーハンの「ポクポク感」とは?

「チャーハン」が登場しました。それは一般的なチャーハンよりもやや濃い茶色で、しかもご飯粒が艶々しており、量は一般的なチャーハンに比べると1.2倍くらいはありそう。その山をレンゲですくうと、中から角切りのチャーシューがゴロゴロと出てきます。

ガバッとレンゲいっぱいすくって食べてみると、ふわりと香る醤油と、得も言われぬ甘み。明らかにこれまで食べていた塩系のチャーハンとは違う味です。ご飯の粒感もしっかりとしていて、一粒ひと粒に油が見事にコーティングされていますが、くどさは全くありません。
そうそう、肝心な食感を確かめねばと、もう一口。ご飯粒同士の間に適度な空気感があるので、ふっくらとして、噛むとご飯粒のしっかりした弾力、こっくりした旨みが押し寄せてきます。ご飯一粒ずつの立体感がすごいので、なんというか、豆を食べているような感じ。噛むたびに、ポクポクしている気がしてきました……。これがポクポクなのか?

回鍋肉を食べていたH君が、「どう?」と言う顔をして見ています。「確かにパラパラ、しっとりともちょっと違って、ポクポクが一番近いかも」と答えると、嬉しそうにしています。
チャーハンを食べているみなさんが、美味しさのあまりご飯1粒も残すまいと豪快な音を立てているのがよくわかりました。また、供されるスープも、一見、味噌汁のように濃い色をしていますが、旨味の濃い中華スープです。これがまたチャーハンをやわらかく包みこむよう。圧巻のチャーハンです。

私も八角皿の上の米粒全てを食べ尽くし、すっかり「ポクポク派」になっていました。店を出て、「ポクポクの意味がわかった気がする」とH君を称賛。「ところで、回鍋肉はどうだった?」と聞くと、「キャベツはシャッキリしていて、豚肉はプルルンとして、甘みとコクがあって、噛むとポクポクして酢をかけるとまた美味しくなった」とのこと。
え、またポクポク? この人、ひょっとして美味しい食感の表現は全部ポクポクなんじゃないか、との疑念が……。しかし、そんなことは胸にしまい、なんとなくチャーハンのポクポクがわかったからいいかと、店を後にしました。ともあれ、『龍朋』のチャーハンは絶品です。食べたことがない方は、ぜひチャーハンの「ポクポク」体験をしてみてください。
(撮影・文◎土原亜子)