榎酒蔵『華鳩』シリーズ

広島県呉市の榎酒蔵は、日本で初めて貴嬢酒造りを始めた酒蔵。一般的に日本酒の醸造は「三段仕込み」と言われる方法で、酵母の働きを徐々に活性化させるために、原材料ある米と水のセットを3回に分けて醸造タンクに投入するのだが、この貴醸酒は三回目に投入する水を清酒に変えて醸造する。「これにより酔っぱらった酵母が酒造りをやめ、アルコールの元になる糖分がたくさん残るため非常に甘いお酒ができるのです」
だから、デザートワインのような非常に甘くてエレガントなお酒ができる。特に『華鳩 太古種累醸貴嬢酒 オーク樽貯蔵』(写真・中央)は、2012年に造った限定1394本の貴嬢酒で、水の代わりに28年熟成の太古酒貴嬢酒を使ってオーク樽の中で寝かせたお酒。
「オークの香り、酸味、甘みが調和した神秘的な味わいで、二度とこの味に出会うことはない、と思わせる逸品です」と薬師さん。
木戸泉酒造『アフス』

千葉県いすみ市の木戸泉酒造の『純米生アフス』は、酸味と甘みがしっかりしていて、白ワインのような味わいでとても爽やかな日本酒。ただ、ご存知のように、ひと昔前まで、こうした酸味の強い酒は好まれなかった。しかし、木戸泉酒造は諦めなかった。このアフスを長期間、蔵で寝かせて保管していたのだ。
「最近、世の中で酸味のある日本酒が少しずつ好まれるようになってきて、アフスも売れるようになってきたのですが、寝かせておいたアフスの1970年代の原酒をブレンドさせて熟成酒を作ったんです。それが『アフス・オールドリザーブ』。酸味と甘みのバランス、醇熟した香り。とてもエレガントな味わいで、こうした古酒こそ、古くて新しい味。こちらも二度と作れないお酒ですので、たくさん買っていかれる方が多い1本です」