中央線の他の駅とは違う独特の雰囲気を持ち、ミュージシャンや劇団員、お笑い芸人に学生など若者などが集うフリーダムな街、高円寺。もちろん、スーツ姿の“元若者”の皆さんたちも自由に酔っ払って楽しんでいる街でもあります。最近では減ってきた、古き良き飲み屋街の雑然とした雰囲気を残す、誰もが居心地のいい街です。
数多ある高円寺の飲み屋さんの中でも、行ったことがない人には観光気分、生まれ育った人には懐かしい気分が楽しめる立ち飲みの店があると聞き、向かったのは『ほんずなし』という店。ほんずなし? ほんなずしって寿司屋の聞き間違い?
店に一歩入るとそこは「津軽」。青森県の観光マップやねぶたのオブジェなどが飾られていますが、白木を基調とした爽やかなインテリアなので入りやすい雰囲気。すべてカウンターの立ち飲み店です。
そもそも、ここってどんな店なんですか?「青森にある『ヤマモト食品』の会社が経営している店なんですよ」と店長の雪田さん。ヤマモト食品とは、青森の人なら誰もが知っている食品メーカー。「ねぶた漬」「数の子醤油漬」など、ゴハンのお供や酒のつまみにピッタリな、魚介の漬物、和え物などを販売しています。
「うちのメニューは、ヤマモト職員の商品がメインですね」と話す雪田さん。確かにメニューを見ると、日本酒半合と、「味よし」「子っこちゃん」「数の子醤油」のいずれか1品で500円、というセットも。
「味よし」は、数の子と大根・キュウリ、昆布などの醤油漬け、「子っこちゃん」は、ししゃもの卵や数の子、するめ、昆布などの醤油漬けです。青森に行ったことがない人にとっては、すべてが初めて。これで津軽の人はお酒飲んだりご飯に乗せて食べてるんだ~。
おすすめを聞いてみると「まずはうちの看板メニューでもある『ねぶた漬』は食べてほしいですね。お酒は半合から頼めるので、好みの味を教えていただければおすすめの銘柄をお出ししますよ。あとは、〆にしんでどうでしょうか?」ということで、日本酒半合とおつまみ2品で決定です。
まずは日本酒、「玉垂」を一口。ちょっと辛口、日本酒らしい味わいです。青森県にある酒造「中村亀吉」のお酒で、蔵の個性と津軽の風土にこだわって醸造したお酒とのこと。「フルーティなのとか、甘い日本酒が苦手、という人に好まれるお酒ですね。昔ながらの日本酒を愛する人に人気です」と雪田さん。
口の中がさっぱりしたところで、「〆にしん」を一口。酢でしめたにしんは柔らかく、にしん自体の甘みもほんのり感じます。このまま食べてもおいしいのですが、ワサビをちょっとつけることで、さらに日本酒に合う味に。醤油なし、ワサビちょこっと、がおすすめです。
そして、津軽のソウルフード、店の看板メニューでもある「ねぶた漬」に。海の幸(数の子、スルメ、昆布)と山の幸(大根、キュウリ)の醤油漬。ヤマモト食品長年のベストセラーでもあります。
一口食べてみると、確かに海の幸と山の幸が醤油と昆布のトロトロで一体化。あとからほんのり唐辛子のピリッとした味も感じます。青森の人は、これで日本酒飲んでるんだ~。それは酒が進むわ~、って思えるほどしっかり醤油の効いた味。数の子のプツプツ感、昆布のねっとり感、大根やキュウリのポリポリ感など、様々なおいしさが口の中に広がります。これ、頬張って食べるもんじゃない。ちょっとずつ、ちびちび味わって楽しむつまみ。ゴハンだったら、これ一口で白米3~4口はイケる感じです。
5月以降は青森から取り寄せた新鮮なウニが味わえる“ウニまつり”を開催。とれたて新鮮なウニは、20g500円とリーズナブルな価格で味わえるとのこと。それは魅力的! 不定期で津軽三味線ナイトも開かれます。
ちなみに「ほんずなし」とは、津軽弁で「間抜け、浅はか」という意味。「ほんずねえな」は「どうしようもねぇな」、となるようです。
弘前城の桜を愛する雪田さんや、青森出身の常連客が話す津軽弁を聞きつつ飲むのもおすすめですよ。
(取材・文◎石澤理香子)
●SHOP INFO
店名:ほんずなし
住:東京都杉並区高円寺北2-17-4
TEL:03-6383-0974
営:16:00~23:00、土曜12:00~14:00、16:00~23:00、日曜12:00~21:00、祝日14:00~21:00
休:不定休