「焼きそば」といえば、子供から大人まで誰もが大好きな麺料理ですよね。日本の焼きそばはソース味が主流ですが、アジアには多種多様な味の焼きそばが存在します。例えば中国の「炒麺」は塩や醤油ベース、タイの「パッタイ」はナンプラーやタマリンド、インドネシアの「ミーゴレン」は甘めのケチャップマニスと魚醤、インドの「ハッカヌードル」はガラムマサラ、台湾の「ビーフン」は塩ベースといった具合。
そして、今回ご紹介するのは香港の焼きそば。正確にいうと、香港の名店『喜記（ヘイゲイ）』の焼きそばです。ちなみに『喜記』は、海鮮料理で超有名なお店ですが、この焼きそばにはエビやカニなどのシーフードの食材は入っていません。味も香港のたまり醤油がベースで、至ってシンプル。
しかし、実はオリジナルの特製ガーリックスパイスがふんだんに入っており、これこそが『喜記』が超人気店になった理由なのです。何しろ、このスパイスの味を目当てに、世界各国の食通や著名人が、わざわざ香港の本店を訪れるほど。
その『喜記』が、一昨年、東京・銀座に初上陸。そのガーリックスパイスを、さっそく食べに行ってきました。
蟹油で揚げたニンニクが味の決め手
『喜記』の焼きそばは“具なし”と書きましたが、ネギともやしと黄ニラといった野菜が入っています。そして麺は極細の乾麺を使っています。
食べてみると、麺は揚げたようにパリッとしていて、しっかりコシがあり、そして、1本1本にコクのある独特な香港のたまり醤油の味が染み込んでおり、非常に奥行きのある味わいです。そして例のガーリックスパイスが麺の合間合間に見え隠れし、その味が、やはり独特。香ばしくてコクがあって、しかもよくあるニンニクチップとは、全然違うんです。
料理長のサイ・エイリョウさんによると、このガーリックスパイスは、蟹油（シェユ）でニンニクを揚げて作るのだそうです。
「蟹油とは、蟹を蒸すときにできる油のことです。だから、海鮮のダシと風味が染みていて、香ばしさもひと味違うんです。ちなみに、このガーリックスパイスは香港の本店でしか作ることができません。銀座店でも、本店から空輸されるものを使っているんですよ」（サイさん）
船上の漁師料理「避風塘料理」とは？
ここで、少し『喜記』のルーツを説明しておきましょう。もともとは、ビクトリア湾の避風塘（タイフーンシェルター）に停泊する水上生活者たちの船上で出されていた、漁師向けのシーフード料理から始まっています。
『喜記』オーナーシェフのリュウ・チュン・ヘイ氏がその料理を陸に移動させて屋台料理で出したところ、口コミで評判を呼び、界隈で人気店になっただけでなく、なんと、オーナーシェフは、料理界の功績が認められるフランスのブルーリボン賞を受賞。だから、あっという間に、香港の「避風塘料理」が世界中に広まったというわけ。
「避風塘料理は、食材に新鮮な魚介を使うことと、寒い海の上で体を酷使する漁師向けに作られた料理がルーツのため、スパイシーかつ、ガーリックをふんだんに使うパワフルな味が特徴。それを体現するが、このちょっと辛いガーリックスパイスなんです」とサイさん。
今では、香港中に避風塘料理を出す店がたくさんありますが、この『喜記』のガーリックスパイスがあったからこそ、世界中に認められたと言えるのかもしれません。
避風塘料理をランチで味わう
さて、焼きそばだけでなく、本格的な避風塘料理は、日本では『喜記 銀座店』でしか味わえません。そこで、味わい尽くすなら「土日限定のランチ」（4,800円）がオススメです。
「フカヒレとカニ肉入りのスープ」から始まり、「大エビの香港醤油炒め」、「ホタテとアスパラの塩味風味」「和牛サーロイン黒胡椒炒め」「季節野菜」「香港風焼きそば」「本日のデザート」までの豪華な内容です。
そしてお店に行けば、『喜記』のガーリックスパイス「極品 蟹油蒜蓉王」（1,620円）が購入できるのも嬉しいところ。
このガーリックスパイスは、パスタ、インスタントラーメン、チャーハン、そうめん、サラダなど、どんな料理にでも合います。一緒に炒めたり、完成した料理にのせたり。また、これだけをフライバンで軽く炒って、お豆腐やご飯の上に載せただけでもめちゃくちゃ美味しいので、『喜記 銀座店』を訪れた帰りには、絶対、買った方がいいです。ぜひお試しください。
（撮影・文◎土原亜子）
●SHOP INFO
店名：喜記銀座店
住：東京都中央区銀座6-3-11 西銀座ビル2F
TEL：03-3289-0505
営：平日ランチ11:30～15:00（L.O.14:30）、ディナー17:30～23:00（L.O.22:00）
土・日・祝ランチ11:30～15:00（L.O.14:30）、ディナー17:30～22:00（L.O.21:00）
休：無休
