
こんにちは。羊齧協会主席の菊池一弘です。突然ですが、羊のもも肉の丸焼きというと、どんなイメージを抱くでしょうか? フォトジェニックで豪快な料理! と誰もが答えるのではないでしょうか。しかし実はこの丸焼き、見た目の豪快さとは裏腹に、下ごしらえや肉質がそのまま味に反映される、とても繊細な料理でもあるのです。
こうした羊の塊肉の丸焼きを出すのは、東京では中国料理店がほとんどで、池袋や西川口などに有名なお店が多く集まっています。とりわけ上野にある『喜羊門(きようもん)』はオープンから3年で2店舗目を出店するなど、着実に存在感が増している人気店です。とにかく、私が連れて行く人が全てリピーターになるのがこのお店で、今回はその秘密をじっくり取材してきましたので、ご紹介します。
肉と下味へのこだわりがスゴい

オープン当初、『喜羊門』では希少な国産羊を使うべく、日本の羊牧場へコンタクトを取ったそうなのですが、もともと頭数が少なく入荷が不安定なことや、もも肉以外の部位の肉も同時に仕入れる必要があることから断念。その後、オーナーの友人のお肉屋さんと相談の結果、肉質と味が決め手となって、オーストラリア産のラム肉を仕入れているそうです。
肉は、醤油や葱を入れた特製のタレに24時間つけ込み、しっかり下味をつけたものだけを提供し、これがなくなればその日は終了と決めているとのこと。美味しいのも納得です。


食べ方・焼き方、自由自在
食べ方の自由度が高いのもこちらのお店の特徴。まるごと出てきた羊の塊肉をその場でキッチンばさみを使って自分たちで切り分け、焼き網の上に並べて焼くのはもちろん、テーブルでお店の人に切ってもらってもOKです。
私は、いつも少しだけ自分で切ってみます。なんせ、ここのキッチンばさみの切れ味がすごいので、ついつい試したくなるのです。ただ、大きな塊肉を上手に切り分けるのは大変なので、残りはお店の人にお任せしてしまいます。

切り分けた肉を網の上で焼くのですが、ここから先は個人のお好みでいろいろ試してみましょう。焼き方はレアでもウェルダンでもよし。焼けた肉には下味がついていますので、そのままでも、クミンや塩をつけて食べてもOK。とにかく自由度が高く、楽しみの幅が広いのです。初めての方はお店の人に聞けば、焼き方を丁寧に教えてくれますよ。

ところで、こうした、屋内で炭火を使用して脂たっぷりの羊肉を焼くお店といえば、きちんと掃除をしていても床に脂が染み付いていたり、メニューがベタついたりすることがままあるのですが、このお店はそれが全くありません。
経営者ご夫婦の奥様が非常にきれい好きで、念には念を入れて専用機器を使い掃除しているとのこと。上着をかけている椅子にも脂はねがつかないようにサテン布をかけてくれたりと、気配りが行き届いていて、家に着いたら自分が羊臭い! ということがないのも嬉しいところです。
羊肉が好きだ! という方はもちろん、羊肉以外の料理も美味しいので、羊初心者にも安心して勧められる貴重なお店です。
羊が喜ぶ門、ということで店名からしてすでに縁起がよさげなこのお店、新年会や羊齧(ひつじかじり)初めに、ぜひ行ってみてはいかがでしょうか?
●SHOP INFO
店名:中国料理 喜羊門 上野店
住:東京都台東区上野2-12-1 セントラル21ビル 5F
TEL:03-5826-8866
営:11:00~15:00 17:00~23:30(L.O 23:00)
休:なし
https://kiyoumon.owst.jp/
●プロフィール
撮影・文◎菊池一弘
羊齧協会主席。羊肉を常食する岩手県遠野市出身の父の影響で、羊肉料理に親しんで育つ。北京留学中に現地の味に触れ、その魅力に開眼し羊好きの消費 者団体「羊齧協会」を結成。本業は、イベントの開催・運営、場作りのプロとしてのアドバイザー業務などに携わっている。最近は四川フェスの運営団体麻辣連盟の幹事長も兼務。
http://hitujikajiri.com/