『ココ・ファーム・ワイナリー』で美味しいワインができるまで

1950年代、平均傾斜38度という急斜面に、特殊学級(現在の支援学級)の中学生たちと、その担任教師である川田昇さんが、ワイナリーの原点となる畑を開墾しました。ここがのちに『ココ・ファーム・ワイナリー』となり、今では美味しいワインを生み出す葡萄がつくられています。
開墾当時、「知恵遅れ」と呼ばれることもあった中学生たちは、実際に雑草と作物の見分けがつかず、成長途中の作物を引き抜いてしまうことも。それを見た川田さんが、「下に生えるのが雑草、上は葡萄ということならわかるだろう」と考え、葡萄づくりをスタートしたそう。結果的に陽あたりや水はけがよく、葡萄にとって最良の条件が揃う畑となり、現在も学園生たちがワインづくりに取り組んでいます。
自然の中での作業を通して自ら働く力をつけ、その力をもとに自然の恵みを引き出し、今では葡萄畑の守護人、そして醸造場の働き手となって主体的にワインづくりに携わっています。

ワイナリー見学では、大きなステンレスタンクとご対面。このステンレスタンク1樽で約8500リットル分の容量があるそう。白ワインだと約1万本、赤ワインだと約8000本分が入ります。
ここで出来上がったワインの瓶詰め作業も「こころみ学園」の学園生が行っていますが、多い日は1日約1万本ものワインを瓶詰めするというから驚きです。

敷地内を歩くと、山の中にトンネルのように続く空間があり、天然のワインセラーとなっていました。温かいと再度発酵が進んでしまうため、セラーの中は年間を通して10〜15度で保たれています。
同ワイナリーの9割の樽は海外から中古で購入していますが、中古だと風味づけしなくても程よい風味が感じられ、使い勝手がいいんだとか。この環境の中でじっくりとワインの熟成が進みますが、放っておくと1週間で500mlくらい蒸発してしまうので、樽に同じワインを継ぎ足しながら手間暇かけて丁寧に熟成させています。
![1992年ヴィンテージスパークリングは必見 [食楽web]](https://cdn.asagei.com/syokuraku/uploads/2024/05/2024050601-cocofarm05.jpg)
セラーの入り口には、同ワイナリーで最初につくられた1992年ヴィンテージスパークリングの瓶が置いてあります。錆が良い味わいを出しているので、ワイナリー見学の際にはお見逃しなく。

こちらはスパークリングワインの瓶内二次発酵後の様子。同ワイナリーでは、シャンパーニュ地方に伝わる伝統的な手法で瓶内二次発酵を進めています。瓶の底に、短く白線が引いてあるのが見えるでしょうか。澱を瓶口に集めるため毎日、手作業で45度ずつ瓶を回すので、白線はその目印。朝晩45度ずつ瓶を何周も回転させ、ゆっくりと澄んだ味わい深いスパークリンワインに仕上げていきます。
澱(おり)と呼ばれる沈殿物を取り除き、コルクを閉めたら出来上がり。それでは、早速、レストランでそのワインをいただきましょう!