
最近、東京で店舗が急増している中国のソウルフードといえば「蘭州拉麺」です。牛肉でとったスープに、手打ちで伸ばした麺を入れる中国回族(イスラム系民族)の料理で、中国の津々浦々、裏路地などに必ずある麺料理です。有名どころでは、連日の大行列で話題になった神保町の『馬子禄』がありますね。
私が北京に住んでいた90年代、大学の寮のそばにあった蘭州拉麺の専門店によく通っていました。それから数えると私の蘭州拉麺歴は20年を超えます。そんな私が最近注目しているのが、昨年8月に池袋にオープンした『火焔山 蘭州拉麺』です。本来、蘭州拉麺は牛肉出汁&牛肉トッピングがベーシックなのですが、こちらでは多種多様な羊料理を楽しんだ後に、〆で珍しい「羊の蘭州拉麺」が楽しめるんです。もちろん、麺は手打ちの自家製麺です。

ちなみに、中国の蘭州拉麺店といえば、それしか出さない専門店がほとんど。だから、羊料理を前菜から〆の麺まで堪能できる、というのは、実は本場でもなかなか体験できない、このお店だけの楽しみ方だったりします。
イスラム系の2つの民族の食文化が融合するお店

冷菜メニューも豊富で、羊の舌などもありますが、今回は羊の内蔵(胃)の和え物(980円)をチョイス。ぴりっと辛味が効き、非常にお酒が進みます。中華イスラム系の料理はお酒を用意している店が結構多いのも嬉しいところです。
今回は頼めませんでしたが、店員さんのおすすめは「手撕羊肉(1,880円)」。羊肉を豪快に塊肉で茹でて、新疆風の辛めのソースをかけて手づかみで食べる、メインを張れる羊肉料理です。

つまみながら飲んでるうちに、大ぶりの串焼きが2種類登場。「新疆羊肉串・羊串のウイグル風(280円)」と「〓(カオ/〓は火へんに考)羊心・羊ハツの串焼き(200円)」です。辛めのスパイスと大振りな肉。炭火でしっかり焼いたカリカリの外側とジューシーな内側の食感のコントラストがたまりません。特に、ハツの歯ごたえは癖になり、やめられなくなる味。
いよいよ〆の「羊の蘭州拉麺」をいただきます!
さて、このあたりで〆の蘭州拉麺をを注文。
前述したとおり麺は手打ちです。ちょうど、厨房で料理人の方が麺を打っているところだったので、見学させてもらいながら色々とお話を伺いました。1本が2本、2本が4本にと、手延べでどんどん麺が増えていきます。打つところだけではなく、水と混ぜてこねるところなど、季節や気候に合わせた微妙な調整がいるそうで、相当な修業が必要とのこと。なるほど、手さばきがなんとも鮮やかです。

注文したのは「羊出汁蘭州拉麺(羊〓(火へんに会)湯麺)」880円。羊肉の風味がかなりしっかりしていて、羊の香りも強いのですが、あっさりしていて、コシがある手打ち麺との相性も抜群。香菜(パクチー)との相性も抜群です。ある程度食べ進んだら、テーブルに設置してある辣油風調味料を入れて、辛味を足して食べるのもおすすめです。

このように、前菜、焼き物、〆の麺と、羊を思いっきり楽しめる、なんとも贅沢なお店なのです。ランチで麺をサクッと楽しむこともできますし、夜にお酒を飲みつつじっくり楽しむことも可能。店員さんもみんな優しく、質問すればオススメを教えてくれますので、お店のウイグル料理や蘭州拉麺へのこだわりを聞きながら料理を楽しむのもいいですね。
それにしても、本場でしか食べられなかった蘭州拉麺が、日本にこんなに増えるなんて思いもしませんでした。過去に中国に住んでいた身としては、感慨深いものがあります。こちら以外にもどんどんと新店がオープンしている蘭州拉麺。今年の個人的要注目ワードです。ちなみに、蘭州拉麺は本来「牛骨」でだしを取るのがならわしなのですが、羊の連載ですので、今回はあえて羊スープの拉麺を取り上げていることをお断りしておきます。
(撮影◎菊池一弘)
●SHOP INFO
店名:火焔山蘭州拉麺
住:東京都豊島区池袋2丁目47-7
TEL:03-6907-1765
営:11:00~15:00 17:00~22:30
休:不定休
●著者プロフィール
菊池一弘
羊齧協会主席。羊肉を常食する岩手県遠野市出身の父の影響で、羊肉料理に親しんで育つ。北京留学中に現地の味に触れ、その魅力に開眼し羊好きの消費 者団体「羊齧協会」を結成。本業は、イベントの開催・運営、場作りのプロとしてのアドバイザー業務などに携わっている。
http://hitujikajiri.com/