スマトラカレーの美味しさの秘訣とは?

『共栄堂』は、神保町駅のA5出口を出て、徒歩30秒ほどのビルの地下にあります。昼時は階段上まで長い行列ができており、筆者が学生時代の時からその人気ぶりはまったく衰えていません。
ただ、行列に怯むなかれ。というのも、『共栄堂』は、着席後、カレーを提供するまでの時間がものすごくスピーディーなので、回転が早く、待ち時間も短いのです。
さて、『共栄堂』のスマトラカレーは、公式HPによれば「小麦粉を一切使わず、20種類の香辛料を1時間かけてじっくり炒め、さらに野菜の形がなくなるまで何時間も煮込んだカレー」です。見た目も、いわゆる欧風カレーとは違って、色がかなり黒いのが特徴です。
カレーの種類は、ポーク(1100円)、チキン(1300円)、海老(1500円)、ビーフ(1500円)、そして一番お高い牛タン(1950円)があり、それぞれ別々の鍋でソースと具材を煮込んで作っているので、カレーの味も全部違うんです。

今回、頼んだのは学生時代には高くて手が出せなかった「牛タンカレー」(1950円)。注文すると、すぐにスープを出してくれます。コーンがベースの野菜ポタージュです。これがしみじみ美味しい。野菜と小麦粉で丁寧に作ったルーベースに、コーンや生クリームを合わせた、温もりを感じる優しい味なんです。

そして、間髪を入れずにカレーが登場します。一般的なカレーよりも黒いのがわかりますよね。そのカレースープの中には、大きな牛タンがゴロゴロと入っています。そしてお皿にはツヤツヤで粒立ちのよいコシヒカリのごはん。

まずカレーをひと口。どろどろ系ではなく、サラサラ系。口当たりはサラッとしていますが、ビターな風味と同時に広がる深いコクがとにかくスゴい。簡単に“コク”と書きましたが、とてもその2文字では表せない奥深さです。コクに階級があるならば、最上級のそのまた上をいくレベルの味わいです。
ちなみに、「牛タンカレー」は他のカレーとは違って、手作りのデミグラスソースを加えているそう。だから、このコクは、他の種類よりも天上レベルのコクだと思われます。

そして、主役の牛タンもスゴい。ふわりとしていて、繊維など微塵も感じることなく、口の中でとろけていきます。一体どれほどの時間をかけて煮込んだらこんなに柔らかくなるんだろうと不思議になるくらいです。

白いごはんに黒いカレーソースをかけ、味わい尽くします。1滴も残したくないほど美味しいカレーソース。食べていたのはたったの15分くらいでしたが、永遠にも思える濃厚な幸せなひとときを過ごせた気がします。

というわけで、『共栄堂』のスマトラカレーの美味しさは、簡単には語りつくせません。筆者はスマトラ島に行ったことはないので、本場のカレーの味は知りませんが、『共栄堂』より美味しいカレーが現地にあるわけがないよな。なんて思ったりもします。
ちなみに、『共栄堂』にはカレー以外にも名物があります。それがデザートの「焼きリンゴ」です。これは10月~4月の限定メニュー。ただし14時以降の提供なので、今回、筆者は食べられませんでしが、また再訪して黒いカレーと焼きリンゴをセットで食べてみようと思います。
(撮影・文◎土原亜子)