メイド・イン・九十九里、暮らしに寄り添う「Sghr スガハラ」のガラス。<前編>【房総food記】

千葉在住ライターが、東京の友人に自慢したい、“ピーナッツだけじゃない”県内のおいしいものを気ままに紹介。房総を拠点にした「食」にまつわるあらゆるものを見つめた、飲んで・食べて・知る千葉の風土&food記です。

手作業で生み出される多彩な色彩と揺らめき。

(千葉県山武郡九十九里町)

「デュオ」(2,160円~5,400円)は、1996年の発表以来ロングセラーを続ける「スガハラ」の看板商品。その名の通り、2つの色の組み合わせに引き込まれる。小鉢からワイングラスまで様々な形を展開中。
「デュオ」(2,160円~5,400円)は、1996年の発表以来ロングセラーを続ける「スガハラ」の看板商品。その名の通り、2つの色の組み合わせに引き込まれる。小鉢からワイングラスまで様々な形を展開中。 | 食楽web

 都内から遊びに来た友人に、まず行ってみたいとリクエストされることが多いのが、九十九里にあるガラスメーカー「菅原工芸硝子/Sghr スガハラ」(以下、スガハラ)の本社工房です。数ある同業メーカーの中では珍しく、製造を機械化することも特定の製法に特化することもなく、一から手作業で、しかも様々な作り方でのガラス作りを貫く同社。食器を中心に、酒器や花器まで幅広く手がけ、これまでに生み出した製品は約5000点にも登ります。

「スガハラ」の製品の大きな特徴は、飴玉のように柔らかいガラスだからこそ生まれる流れるような「揺らめき」と、多彩な「色使い」の2点。多くの色ガラスを作るということは、それだけ管理の手間や日々の製造計画の緻密さが必要とされますが、透明ガラスだけではなく、季節を問わず使える深みのある色使いには選ぶ楽しみがあります。
 それに、手作業なのに同じ規格に仕上げていく精巧さと、手作業だからこそ色の重なりや表情が微妙に異なるアナログさが絶妙なバランスで同居しているところにも、愛着が増します。

 敷地内には、作業の様子を見学できる工房のほか、ほぼ全ての商品が一堂に会す併設ショップや、自社製品で食事ができるカフェもあり、ゆったりとガラスにまつわる時間を過ごせるのが人気の理由です。

 昭和7年。現社長である三代目の菅原裕輔さんの祖父・一馬さんにより、ガラス製造が盛んな東京・亀戸で創業した「スガハラ」。
「工房が手狭になって来た頃、たまたまお花見に訪れたこの土地を祖父が気に入り、昭和36年に今の場所へ移転したと聞いています」と菅原社長。ガラス製造は1400度以上にもなる高温の炉を毎日相手にする過酷な仕事。空調を入れても、工房内は50度近くになることもあるといいます。
「都内の方が確かに便利でしょうが、祖父には、職人たちにとってより良い環境でものづくりをしたいという思いがあったようです。ここは海が近いし、風通しもいいですから、ガラス作りにはいい場所だと思いますよ」

昭和36年に亀戸から九十九里へ移転した際に植えられた多くの桜の木が今も敷地内を彩る。奥に見えるのが工房、手前の白い建物がショップ。
昭和36年に亀戸から九十九里へ移転した際に植えられた多くの桜の木が今も敷地内を彩る。奥に見えるのが工房、手前の白い建物がショップ。
お話を伺った三代目社長の菅原裕輔さん。手に持っているのは、自社製品のシャンパングラス「ヘレン」(1脚4,320円)。ベテラン職人が型を使わずに吹き、一瞬だけの自然な揺らぎを形にしたもの(まさに職人技!)。社長自身もお気に入りだとか。
お話を伺った三代目社長の菅原裕輔さん。手に持っているのは、自社製品のシャンパングラス「ヘレン」(1脚4,320円)。ベテラン職人が型を使わずに吹き、一瞬だけの自然な揺らぎを形にしたもの(まさに職人技!)。社長自身もお気に入りだとか。