メイド・イン・九十九里、暮らしに寄り添う「Sghr スガハラ」のガラス。<前編>【房総food記】

職人の自由な発想を大切に日常を彩るガラスを目指して。

幅広い世代の職人たちがものづくりに励む本社工房。平日はガイド付きの無料見学がある(土日祝は自由見学)。
幅広い世代の職人たちがものづくりに励む本社工房。平日はガイド付きの無料見学がある(土日祝は自由見学)。

 そんな伸び伸びした環境で切磋琢磨する職人は、現在31名。地元の高校を卒業したばかりの10代から70歳間近の大ベテランまでが一緒にガラス作りに精を出します。女性職人の数が多いのも印象的で、数人ずつのグループを組み、阿吽の呼吸と連携プレーで、次から次へと様々な形の作品を作っていきます。
「うちは5000点も製品があるので、毎日いろいろな種類の注文が少しずつ入ってきます。なので、長くて半日から1日、短い時は10個作ったら他のものを作るというのが基本スタイル。一般的なガラスメーカーは得意な製法に専念する専門工場がほとんどですが、うちは全部の製法をやる会社なので、ここで修業したらどれでも作れるようになりますね」

 手作業で、しかも様々な製法でガラスを扱えるようになるというのは、実はとても難しいこと。日や時間によって硬度などが常に変化するガラスを用い、一定の形・大きさに仕上げていくのですから、技術の習得にも長い年月が必要。一人前の職人になるには最低10年はかかるといいます。
「うちのやり方は一見非効率かもしれないですが、このスタイルを採用し続けている理由は“ガラスの可能性”を追い求めたいからなんです。特定の製法だけに特化してしまうと、ものづくりの可能性を狭めてしまうことにもなりますしね。でもまあ、いろんなことに興味があってやっているうちに、どんどん広がっていっちゃった感じかな」と微笑む菅原社長。“ガラスの可能性”を信じるその姿から、尽きることのないガラス愛を感じました。

 毎年定期的に新作を発表していますが、職人たちにはあえてマーケティング戦略などは伝えず、自由な発想でデザインを考えてもらっているといいます。
「職人たちには、なるべく制約なく、ガラスでできる美しいことや新しいことを見つけ出していってほしいと思っているんです」

 そんな「スガハラ」のガラス作りの唯一のコンセプトが、「暮らしの中で使えるものであること」。品質やデザインにこだわりながらも、手が出る価格帯で、生活に彩りを添える製品を考え続けています。
「例えば、うちのグラスでお酒を飲むと1日の疲れがとれたりとか、凝ったお料理じゃなくても器に盛り付けたら楽しい気分になったとか、普段使いしていただくことで気持ちが盛り上がるようなガラス作りをこれからも目指していきたいですね」

 次回は、その心情がさらに伝わる併設カフェに込めた思いや、今年から新しく始まったクラフトマーケットなどをご紹介します。お楽しみに!

2017年の新作であるワイングラス「セン」(1脚2,538円)は、茶道で使われる茶筅がモチーフ。一見、大胆に感じられるデザインだが、実際に使用すると握りやすく、口当たりも滑らかで食卓にもすっとなじむ。まさにスガハラマジック!
2017年の新作であるワイングラス「セン」(1脚2,538円)は、茶道で使われる茶筅がモチーフ。一見、大胆に感じられるデザインだが、実際に使用すると握りやすく、口当たりも滑らかで食卓にもすっとなじむ。まさにスガハラマジック!
九十九里の本社工房に併設されたショップには、「スガハラ」のほぼ全ての商品が揃うため、わざわざ訪れる人が多い。入口に近いスペース(写真手前)には、その年の新作が並ぶ。
九十九里の本社工房に併設されたショップには、「スガハラ」のほぼ全ての商品が揃うため、わざわざ訪れる人が多い。入口に近いスペース(写真手前)には、その年の新作が並ぶ。

●SHOP INFO

店名:菅原工芸硝子/Sghr スガハラ

住:千葉県山武郡九十九里町藤下797
TEL:0475-76-3551
営:ショップ9:00~18:00
  カフェ10:00~18:00(ランチ11:30~14:30、L.O.17:30)
休:年末年始休(不定休あり)
カード:使用可
駐車場:20台(無料)
車の場合は、1)都心から首都高速・千葉東金道路経由、2)横浜方面からアクアライン・圏央道経由にて、各1時間半ほど。
電車の場合は、JR東金駅から九十九里鉄道バスに乗車し、「日本ペイント前」にて下車すぐ。
http://www.sugahara.com/
※価格はすべて税込表記。
※工房見学は1日6回開催(所要時間約10分・無料)。ただし土日祝はガイドなしの自由見学、および職人の数は少なめなので要注意。

●著者プロフィール

白井いち恵

千葉市育ち&在住の編集者・ライター。『千葉の本』『千葉の本2』(京阪神エルマガジン社)を手がけ、出身地・千葉県の知られざるおいしい&楽しいを大特集した。路線バス好きでもあり、著書に『東京バス散歩』(同上)。