鹿児島・大隅半島で蒸溜する、新しいスタイルの芋焼酎が誕生
グラスに顔を近づけると、ほわんとしたさつまいもの甘い香りがたちのぼりました。サントリーが手掛ける本格芋焼酎「大隅〈OSUMI〉」は、さつまいものフレッシュで甘い香りが特徴。ロックで飲むとさらに香りが広がるが、飲み心地はすっきりとしています。
この「大隅〈OSUMI〉」を造る大隅酒造があるのは鹿児島県大隅半島。2005年に設立されたまだ若い蒸留所ですが、意欲的な焼酎造りに取り組んでいます。
焼酎王国・鹿児島は、自社で蒸溜を行う蔵だけで県内に114軒もあるそう。多くは古くから焼酎造りが行われてきた薩摩半島に集中していますが、大隅酒造が位置する大隅半島にも比較的新しい焼酎蔵が増えているとか。この二つの半島で作られる焼酎の個性は、それぞれさつまいもを育てる畑の土の違いに由来するところが大きいといわれています。
「薩摩半島には小規模な仕込みを行う古い蔵元が集まっています。畑の土は赤土で、ここで獲れる芋から作る焼酎は、比較的どっしりとしたタイプが多いと言えます。大隅半島の畑は薩摩半島とは異なる黒土で、ここで採れる芋から造る焼酎は、シャープでキレがあり、少しモダンな印象になります」と話すのは大隅酒造工場長の斯波(しば)大幸さんです。
今年9月中旬、この大隅酒造への取材ツアーが行われました。到着するとすぐに、斯波さんが黒土が顔を出した畑へと案内してくれます。さつまいもの収穫はお盆明けから始まり、11月中旬にかけて行われるそうで、目の前ではちょうど芋の収穫が行われています。
芋焼酎に使うのは、クリーム色の表皮が特徴の黄金千貫。でんぷん質を豊富に含むこのさつまいもは、芋焼酎に用いる最適な品種の一つです。
「黄金千貫は日持ちがしないのが欠点です。収穫して時間がたつと風味が落ちてしまうのですぐに蒸溜所へ運び、2~3日中には仕込みに使います」(斯波さん・以下同)
大隅酒造では生のさつまいもだけを使うため、蒸溜所も収穫期の今がまさに仕込みで大忙し。劣化しやすい黄金千貫は、収穫されるとすぐに日に当たらないように遮光袋に入れて、素早く蒸溜所へと運ばれていきます。その袋を少しだけ開けて中を見せてもらうと、ぷっくりと太った芋がたっぷり入っていました。斯波さんによれば今年は豊作だといいます。