鶏の旨味がギュギュッと凝縮された至極のラーメンに感激!

店内はL字カウンターのみの8席。着席すると、目の前でラーメン作りがよく見えます。厨房のスタッフは2人。
1人が、温めた丼に黄金色の鶏油を入れ、もう1人がタレを2種類投入。そこに最初の人が透明のスープを注ぎ、茹で上がった麺を湯切りして投入したら、もう1人が、豚チャーシュー2枚、鶏ムネチャーシュー1枚、煮玉子、穂先メンマ、ワンタン2個、九条ネギをトッピング。仕上げに最初の人がまたまた黄色い鶏油をタラーリと回しかけます。この2人による餅つきのようなリズミカルなコンビネーションを経て、「特製醤油ラーメン」が目の前に登場しました。
おお! 思わず頭の中で喝采が上がります。丼の中がキラキラと輝き、まるで絵に描いたような美しい醤油ラーメン。美味しいものは美しい。これは絶対ウマいやつだと確信。鶏油の香りなのか、醤油タレの香りなのか、なんとも言えない高貴な香りが漂ってきます。
いざスープをひと口すすってみると、ガツンと鶏白湯の旨みが脳天を直撃。丸みを帯びたまろやかさ。その旨さにジーンと心打たれ、しばし天を仰ぎ見てしまいました。

続いて、ストレートの麺をすすると、ツルツルと口当たりがよく、噛むと跳ね返るような小麦とスープの旨味が一体化し、波のように旨さが舌の上を駆け抜けていきます。これはウマい! というかもはや美味しいを通り越してスゴい! 麺をすすればすするほど美味しさが倍加していきます。麺がなくなっていくのが悲しくなるくらい。

麺とスープを味わったら、トッピングへ。まずはワンタン。ツルンとした皮がスープを吸って、クニャリと折り重なっています。口に入れると、トゥルットゥル。織姫様の羽衣もかくや、というような気品あるなめらかタッチ。中には鶏の団子が入っていて、これまたふんわりジューシーでめちゃくちゃ旨し。

さらにチャーシューもいただきます。ふわふわの豚チャーシュー、しっとりみずみずしい鶏チャーシュー。この豚と鶏のダブルチャーシューを味わうに至り、確信しました。「このラーメン、向かうところ敵なし」と。完璧です。
そして煮玉子を割れば完璧な半熟具合の黄金色の黄身がとろ~り。穂先メンマだって抜かりナシ。極上のスープをまとって、しんなり柔らかくて優しい味わいです。
というわけで、この特製醤油ラーメン、ちょっとすごすぎました。丼内の細部に至るまで、非常に丁寧に作られていて、しかも全てのバランスが完璧。加えて気品までを備えている…。最初に「1300円なんてお高い」なんて思った自分をひっぱたきたいくらいです。

口いっぱい幸福感を残しながら店を出て、改めてお店を振り返り、『トイ・ボックス』という文字を二度見。ネットで検索してみたら、この『トイ・ボックス』、ミシュラン・ビブグルマンに2015年から5年連続で選出されたお店で、他にも数々のラーメン大賞を受賞した名店中の名店でした。
しかしこうして知らない街で、行き当たりばったり行列に加わって、まさかこんな絶品ラーメンが食べられるなんて、やっぱり日本のラーメン文化のレベルは高いなあ、と再認識したのでした。
調査結果
行列店に並んだら美味しいラーメンにありつけた! というか下調べしまくってそれを確認するようにしてお店に行くよりも、偶然の出会いはさらに楽しいことがわかりました。
(撮影・文◎土原亜子)