焼き上がりまで1時間待ちでも損ナシ! 絶品あゆの塩焼き

『船場亭』は理想的な佇まい、立地でした。風情ある藁葺き屋根。目の前に広がる鬼怒川の清流。見上げれば広い空。のんびりとした田舎の風景が広がり、日光東照宮に負けず劣らずのパワースポットのような印象です。

店の外では職人さんが魚に串を打っていて、窓から覗くと焼き場が見えます。中の職人さんは、魚に塩を振ったり、1本1本の焼き具合を見ています。その魚たちはまるで元気に泳ぐような姿で波うちながら串に刺さっていて、こんがり焼き目も見えます。見るからに美味しそうじゃありませんか!

さっそく、店の中に入ろうとしたときです。入り口にいた女性店員さんに、「ただ今、ご注文いただいてからお料理が出るまで1時間ほどかかりますが、よろしいでしょうか?」と宣告されました。え、1時間!?
そうなんです。タクシーの運転手さんの言葉通り、ここは注文を受けてから魚を炭火でじっくり焼くので、ものすごく時間がかかるのです。日光東照宮を歩き回ったこともあり、おなかはペコペコ。正直1時間待ちはかなりキツいですが、さっき見たあの美味しそうなアユを食べずに帰るなんてできるわけがありません。
というわけで「あゆの塩焼き定食」(1300円)と「いわなの塩焼き定食」(1700円)を注文し、1時間、庭を散歩してみたり、本を読んだりして待ち続けます。そうして、満を持して登場したのがこちら!

美味しそう! 思わず声が出てしまいます。間近で見るあゆやいわなの塩焼きは、ふっくらしていて、皮はパリッパリ。ピンと尻尾も跳ね上がっていて、見るからに新鮮そうです。あゆは “香魚”というだけあって独特の青っぽい香りが漂います。

串の両端を持ってかじってみると、パリッと皮を破った中の身はふわっふわ。あゆの濃厚な旨み、そして粗塩の甘味が相まって、バランスが最高です。もちろん、ワタも程よい苦味でかなり美味!
お米も釜炊きなのか、粒立ちがよくてめちゃくちゃ理想的な炊き具合。あゆ、いわなをおかずにご飯もどんどん進みます。頭だけ残して中骨も内臓も尻尾もあっという間に全部完食です。ちなみに、定食の味噌汁もものすごく美味しいです。

周囲のお客さんたちを見回してみると、やはり塩焼きを頼んでいる方が多いのですが、それに加えてあゆのフライを食べている人も多く、それもかなり美味しそうでした。
というわけで、栃木のタクシーの運転手さんに聞いた『船場亭』は大正解でした! また近いうちに絶対食べに行こうと思います。
(撮影・文◎土原亜子)