お父さんとお母さんの温かさが染みるお弁当
さて、大黒屋さんは創業30年。お父さんこと渡辺茂さんと、お母さんこと美登里さんの二人で始めたお弁当屋さんなんです。
では、なぜ、こんなに唐揚げがてんこ盛りで、しかも1つ1つがでっかいのでしょう。
お父さんは寡黙なので、お母さんに聞いてみました。
「唐揚げがウチの名物になってしまいましたが、創業当時から何も変わっていないんですよ。特別なことは何もない。大きさは、主人が、鶏肉を小さく切るのは面倒だからと言って、大きく切っただけのことで、味付けもニンニク、生姜、醤油、片栗粉でつけた、いわゆるシンプルな家庭の味です。ただ、大きいので、揚げるのに7~8分かかりますけどね。本当に何も工夫をしていないなので恥ずかしいわ」と照れていました。
僕は、お父さんとお母さんのあったかい雰囲気が大好きなんです。


お母さんは、謙遜しまくっていましたが、すっかり名物になった「からあげ弁当」のために、1日60kgの鶏肉を仕込み、唐揚げ系の弁当だけで、多い時は1日に200食くらい作るらしいんですよ。仕込みから調理、販売まで全て2人だけでやっていて、それでいておかずのすべてを一つひとつ丁寧に作っている。
キンピラゴボウや厚焼きの卵、カレーや豚肉炒め、牛肉の煮込みなど化学調味料は一切使っていない手作り。この温かな家庭の味を、長年守り続けて、街のたくさんの人の胃袋を満たしているなんて、本当に尊敬します。遠方から1時間かけてこのお弁当を買いに来るという人もいるんですって。


「しっちゃかめっちゃかで、四股踏んでやっていますよ。もう暇なしです」と笑うお母さんは、「もう、歳だから私たちはそろそろ卒業です」なんて言っていました。そんなことを聞いたら、ちょっと寂しくなって、からあげ弁当が今夜もまた夢に出てきそうです。
到着しました。ほら、今日も元気に開店しています。良かった!
ぜひ、蓋の閉まらない「からあげ弁当」を買ってみて下さいね。
(構成◎土原亜子)
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●プロフィール
荒川治
東京都内在住のタクシー運転手。B級グルメ好きが高じて、現職に就き、お客さんを乗車させつつ、美味い店探しで車を回している。中年になってメタボ率300%だが、「死神に肩をたたかれても、美味いものを喰らって笑顔で死んでやる」が信条。写真検索で美味しそうなモノを選び、食べに行って気に入ればとことん通い倒す。でもじつは、自分で料理を作ることも好きで、かなりの腕と評判。