挽いた豆にお湯を注ぎ、時間が来たらレバーを押し下げる。そんな簡単ステップで珈琲豆の味わいが堪能できるコーヒープレス。家事の合間に、仕事の休憩に。初心者からプロまで使えるうえに、手間いらずで実用的。なのになぜか、知名度は今ひとつ。使えばきっと好きになる、愛すべきコーヒープレスの魅力をご紹介します。

コーヒーを飲むために、保温性のあるマグボトルを持ち歩く人は珍しくないと思う。これがあれば、自宅で淹れたコーヒーを公園で楽しんだり、空のマグを街のコーヒースタンドやカフェに持っていき、好きなコーヒーを入れてテイクアウトしたりするのも簡単だ。しかし今回紹介する「トラベルプレス」は、そこから一歩踏み込んだ“コーヒーを淹れられる”マグボトル。なんとボトル自体がコーヒープレスになっている代物だ。
作っているのはコーヒープレスメーカーの第一人者であるボダム社。構造はシンプルで、タンブラーの蓋部分にコーヒープレスと同じ金属製のフィルターが搭載されている。粗挽きに挽いた豆をトラベルプレスの中に入れ、お湯を注ぎ、4分後にプランジャーを押し下げる。
淹れ方はコーヒープレスと変わらないのだ。



この「トラベルプレス」という名前から、どこにでも持っているイメージを連想するが、実際に使ってみると少しクセがあることが分かる。というのも、飲み口部分の蓋が完全密封ではないので、傾いたくらいは平気だが、真横にしたり逆さにしたりすると液体がこぼれ出ることがあるのだ。そのため「リュックなどバッグの中に気兼ねせず突っ込みたい」という人は、完全密閉タイプの保温ボトルのほうが向いているかもしれない。
個人的に、この「トラベルプレス」が実力を発揮するシーンは、仕事場用のコーヒープレス兼マイタンブラーにすることではないか、と思う。仕事中も好きな豆でコーヒーが飲みたい、という人も、デスクの引出しにコーヒープレスを入れておくのは少々場所を取る。しかし「トラベルプレス」なら、用意するのは挽いた豆くらい。あとはオフィスのウォーターサーバーやポットでお湯を注げば、手軽に本格的なコーヒーが飲める。デスク上に置いておいても違和感がないうえ、本体は二重構造になっているので、マグカップで飲むよりも長い間温かさもキープ可能。完全密閉でないにしろ、ちょっと倒したくらいでこぼれることもないので、パソコンや書類を広げながら飲むにも安心だ。

オフィスで豆ガラの始末をどうするか、という点については少し工夫が必要かもしれない。キッチンがあれば、三角コーナーに捨ててから軽く洗って問題なく二杯目が飲めるだろう。水回りの設備がない場合は、100円ショップのペーパーフィルターを買ってきて、その中に豆ガラを捨て、すすいだ水も流し込んで水を切り、燃えるゴミとして捨てるのが簡単だ。
朝はお気に入りの豆で淹れたての一杯を。午後はマイボトルとして持ち出して、ランチの帰りにテイクアウトのコーヒーを入れてもらう。そんな使い分けをして活用するのも、コーヒーライフをさらに楽しむ方法のひとつになるのではないだろうか。
●著者プロフィール
写真・文/木内アキ
北海道出身、東京在住。”オンナが楽しく暮らすこと”をテーマに、雑紙や書籍、ウェブなどで人・旅・暮らしにフォーカスした文章を執筆。プレスコーヒー歴7年。目標は「きちんとした自由人」。執筆活動の傍ら、夫と共に少数民族の手仕事雑貨を扱うアトリエショップ『ノマディックラフト』を運営中。
HP: http://take-root.jp/