挽いた豆にお湯を注ぎ、時間が来たらレバーを押し下げる。そんな簡単ステップで珈琲豆の味わいが堪能できるコーヒープレス。家事の合間に、仕事の休憩に。初心者からプロまで使えるうえに、手間いらずで実用的。なのになぜか、知名度は今ひとつ。使えばきっと好きになる、愛すべきコーヒープレスの魅力をご紹介します。
「フレンチプレス」と呼ばれることが多いコーヒープレスだが、英語表記で「FRENCH PRESS(c)」の登録商標を持っているのは、1944年にデンマークで創業した『ボダム』。数あるコーヒープレスメーカーの中でも世界的に高い人気を博しており、同社が初めてフレンチプレスを製造した1974年から今日まで、その製造数は1億個を越えるというから恐れ入る。我が家でも人数&用途別で使い分けているボダム社製のコーヒープレスは計4個。
「私自身、フレンチプレスを使うようになってから、誰かのためにコーヒーを淹れるのが怖くなくなったんです」と微笑むボダム ジャパン広報の渡邉麻衣子さん。わかる、その気持ち。以前も触れたが、技術の差により味が変化するドリップ式とは違い、コーヒープレスは手順さえ踏めば、誰でもほぼ同じ味に淹れられるのが特徴。上手に淹れる自信がないのに人にコーヒーやお茶を出すのは正直苦行だけれども、この器具があれば「うまい←→へた」のヒエラルキーから抜け出せるのだから、気が晴れることこのうえない。
そうだ、気楽と言えばもうひとつ。ボダムのフレンチプレスのほとんどのモデルが、各部のパーツをバラバラに取り外せる仕様。つまり、油分を含んだ豆ガラがこびりついた抽出後のプレスを、バラバラにして洗剤をひと垂らししたお湯につけておくだけでキレイになる仕組みだ。もちろん食器洗浄機に入れてもよいそうだから「洗う」のも手間要らず。「パーツを流してしまった!」なんてアクシデントのために、部品のばら売りもしている。
淹れるのも洗うのも簡単、とずぼらな筆者が飛びついてはや7年。手軽なのは間違いないが、ボダムの個性を如実に表すのは、ヘリンボーンのように編み目が交互に走る、3層ステンレス製のフィルターだ。目が小さすぎると味が薄く、大きすぎると雑味が増えるものだが、カフェのオーナーやプロテイスターには「この絶妙な目の粗さがいい」と評されているのだとか。
挽いた豆にお湯を注ぎ、プランジャーを押し下げる仕組み自体はどのメーカーもほぼ共通。にも関わらず、個性もデザインも違うフレンチプレスを作っているのがボダムの面白さ。それについては、また次回に!
●著者プロフィール
写真・文/木内アキ
北海道出身、東京在住。”オンナが楽しく暮らすこと”をテーマに、雑紙や書籍、ウェブなどで人・旅・暮らしにフォーカスした文章を執筆。プレスコーヒー歴7年。目標は「きちんとした自由人」。執筆活動の傍ら、夫と共に少数民族の手仕事雑貨を扱うアトリエショップ『ノマディックラフト』を運営中。
HP: http://take-root.jp/