進化してきた至極の1杯
基本のラーメンは「醤油らーめん」(740円)、「煮干しそば」(790円)、「背脂そば」(790円)の3種類。それぞれ、チャーシュー増しタイプと、“得製タイプ”があります。私が最初に食べたのは、「得製煮干しそば」(1140円)でした。

具材は、ほうれん草、メンマ、玉ネギ、チャーシュー、煮卵、そしてナルト。
見た目は“美しい”というくらい完璧なビジュアルのラーメン。そしてスープを一口。煮干しの風味がふわ~っと香り、醤油スープの上品な味に感激。そして麺に箸を伸ばすと、なんと平打ちのちぢれ麺でした。煮干しそばの多くはパツパツの低加水麺が多く、これを基準にしていた私は、意外でした。

でも、この麺が旨いのなんの。つるっつるの、もっちもち。噛みしめると、うどんのような小麦感。でも、うどんじゃない。それは、煮干し醤油の中華スープとの相性と抜群の適度な縮れ具合だからなのです。
さらにチャーシューは、食感をきちんと残しつつ柔らかで、その味付けもスープを邪魔しない。大量に入ったメンマの食感もしゃっきりとしていて、スープになじむ。粗目のみじん切り玉ネギは、味も食感も最高のアクセントです。

具材に箸を伸ばすたび、仕事の1つ1つに丁寧さを感じ、食べ進んで行くと全体の味のバランスまできっちり計算されている、と確信。まさにパーフェクトな1杯。これは、他の種類のラーメンも絶対に食べなきゃいけません。
というわけで後日、すぐ再訪したのです。次に食べたのは、「チャーシュー醤油らーめん」(990円)。

スープをいただくと、「煮干しらーめん」とは違い、生姜の香りがフワッとしました。そして、こちらの麺は中太ストレート。この麺は、ツルンと滑らかで、噛むともちもち。もう、拍手したいくらいです。

厨房には、ご主人・田村和重さんとその奥様がいて、手際よくラーメンを作り、お客さん1人1人に気配りし、目も配り、声もかけています。なんて、ほんわかした空気なのでしょう。そこで、私も少しお話をさせてもらうと、お店は3年前にオープンしたと教えてくれました。
「毎日、オープン前に二人で1杯ずつラーメンを試食して、よし、これならいける! と言って店を開けてるんですよ。その毎日の積み重ねで、じつは3年前とはメニューも味も変わりました。こんな住宅街で、よく3年もったなと思いますが、とにもかくにも、毎日1つ1つ丁寧に作ろうと、すべて自家製。おかげさまで少しずつお客様に認めていただいて、週末には並んでいただけるようにもなりました」とご主人。
何より二人が大事にしてきたのは、「食べて美味しいかどうか」だった。そこに感激します。さらに、ご主人が興味深いことを言っていました。
「うちのレシピを教えて欲しいという人にはすべてお伝えします。ただ、野菜炒めでも炒飯でも、レシピ通りに作っても味は違う。タイミングや火加減などでガラリと印象が変わるからです。私自身もそうです。だから、毎日、二人で舌で確かめて、より美味しいものを追求しているんです」
感激しちゃいました。料理は本当に奥が深い。ぜひ、『拉麺アイオイ』の味を試してみてください。真摯に進化を続ける最高の味。最後に1つだけ、閑静な住宅街なので、並ぶときはご近所への気配りもしてくださいね。私も、また食べに行きます。
(撮影・文◎土原亜子)
●SHOP INFO

店名:拉麺 アイオイ
住:東京都板橋区坂下1-3-7
TEL:03-6279-8207
営:11:30~15:00 18:00~21:00
休:日
●プロフィール
荒川治
東京都内在住のタクシー運転手。B級グルメ好きが高じて、現職に就き、お客さんを乗車させつつ、美味い店探しで車を回している。中年になってメタボ率300%だが、「死神に肩をたたかれても、美味いものを喰らって笑顔で死んでやる」が信条。写真検索で美味しそうなモノを選び、食べに行って気に入ればとことん通い倒す。でもじつは、自分で料理を作ることも好きで、かなりの腕と評判。