探究心をかきたてるコーヒー抽出器具『エアロプレス』を使ってみた|コーヒープレス古今東西

探究心をかきたてるコーヒー抽出器具『エアロプレス』を使ってみた|コーヒープレス古今東西
食楽web

挽いた豆にお湯を注ぎ、時間が来たらレバーを押し下げる。そんな簡単ステップで珈琲豆の味わいが堪能できるコーヒープレス。家事の合間に、仕事の休憩に。初心者からプロまで使えるうえに、手間いらずで実用的。なのになぜか、知名度は今ひとつ。使えばきっと好きになる、愛すべきコーヒープレスの魅力をご紹介します。

 プレス式の抽出器具のなかでも、ここ10年ほどじわじわとファンを増やしているのが『エアロプレス』。“エアロ”と名の付くとおり、空気の圧力でコーヒーを抽出するのがその特徴だ。パッケージの写真にあるように、大きな注射器のようなその見た目はまるで何かの実験器具のよう。

 意外にも、エアロプレスの生みの親・エアロビー社はフリスビーの製造会社。もともとは「野外で手軽にエスプレッソのようなコーヒーを飲めるように」という目的で開発され、その目的どおりお湯と豆をセットして圧をかけることで、驚くべき速さでコーヒーが入る。

 プレス、と名前がついてはいるが、その味わいは定番のフレンチプレスとは個性が異なる。同じ豆で淹れると違いがはっきり表れるのだが、エアロプレスのほうがコーヒーのフレーバーをすっきりと引き立てる。フレンチプレス独特の濃厚さやコーヒーオイルが苦手な人や、ハンドドリップ派とも、エアロプレスは相性がよいのではないだろうか。

抽出の手順

エアロプレスの道具一式。細~中挽きの豆とお湯さえあれば、すぐに抽出にトライできる。
エアロプレスの道具一式。細~中挽きの豆とお湯さえあれば、すぐに抽出にトライできる。

 お湯を沸かしている間に、ふたに専用のペーパーフィルターをセットする。

 しっかりとハリのある紙質。

 丸いふたの中にポンと入れるだけ。今回は乾いたまま装着するが、ふたにしっかりと張りつくよう、フィルターにお湯をかけて湿らせる、というテクニックもあるので次回は試してみてほしい。

 フィルターが下に来るよう、本体をカップに装着する。抽出するときに上から圧をかけるため、マグカップなど底が安定性しているカップを選ぼう。耐熱性のあるビーカーなどに抽出した後、別なカップに注ぐのも方法だ。

 本体の上部に、キットに入っていた漏斗をセットし、挽き立てのコーヒー豆を入れる。1杯分はだいたい細~中挽きの豆20g、お湯200gを目安に。

 漏斗を外し、お湯を注いだ後、粉とお湯をなじませるため、付属のパドルで優しく撹拌する。

 注射器のような形をしたプランジャーをセットし、上から手で圧をかけ、コーヒーを押し出していく。最後まで一定の速度を保つようにするのがコツ。両手を使って押した方が安定する。

 最後までプランジャーを押し切ると、もうコーヒーが入った。圧力をかけてから約30秒の早技。

 比較的、濃く入りやすいので、この状態で飲んでみて濃い場合はお湯を足してかき混ぜ、調節するとよい。フレーバー際立つ味わいが、こんなに素速く楽しめるとは驚きのひと言だ。

 嬉しい特徴がもうひとつ。ふたを外してから、プランジャーを押し切るとフィルターと豆がぽろっと取れる。掃除もかんたんだ。

 独特の使い方に慣れてしまえば、非常にかんたんに淹れられる一方、お湯や豆の量、抽出時間、プレスのスピードなどの微妙な変化が味わいに影響を及ぼす繊細さもあるエアロプレス。それだけ研究の余地があるのが面白さ、とも言える。YouTubeなどを検索しても、さまざまな淹れ方が紹介されているので、あれこれ試しながら自分好みの味わいを探り出してみてほしい。

●著者プロフィール

文/木内アキ

北海道出身、東京在住。“オンナが楽しく暮らすこと”をテーマに、雑紙や書籍、ウェブなどで人・旅・暮らしにフォーカスした文章を執筆。プレスコーヒー歴7年。目標は「きちんとした自由人」。執筆活動の傍ら、夫と共に少数民族の手仕事雑貨を扱うアトリエショップ『ノマディックラフト』を運営中。
HP:http://take-root.jp/