
●都内の本当に旨い店を、料理を愛し、味を知り尽くした料理のプロに紹介してもらいます。
野方の寿司店「おたや」の代表・御旅屋 良さんにご紹介いただいたのは、広尾のイタリアン「San Ciro(サンチーロ)」。食べることが大好きで日常的に飲食店の情報を収集している御旅屋さんが、偶然出合った一軒だそう。
「訪れるたびにメニューが変わっているんです。『今日は何があるんだろう』と毎回ワクワクします」と御旅屋さんは推しポイントを語ります。今回は冬季限定のメニューを紹介していただきました。

明治通りから一歩路地を入った祥雲寺のそばにサンチーロはあります。
「メニューは食材ありき。旬の食材を見て、そこから着想することが多いですね」と語るのは、オーナーシェフの赤津達郎さん。
コースを含め、メニューのほとんどは月替わり。イタリア各地の料理を軸に、日本の四季がもたらす食材を丁寧に掛け合わせます。

まず、一皿目は冬の名物ともいえる北海道産の鱈の白子を使った「白子のフリット」(2,500円)。サンチーロのスペシャリテの一つです。衣は軽やかで、中はとろりとクリーミー。添えられた春菊の蒸し煮とポロネギのマリネが、白子の濃厚さとほのかな甘味を際立たせています。

「白子は一度野菜の出汁で軽く火を入れて漬けておき、そこから揚げることで、生臭みが抜けて、味わいが凝縮されるんです」と赤津さん。
「野菜の出汁ですか! 和食だと塩と酒でシンプルに下処理をすることが多いので、この方法は初めて聞きました」と、御旅屋さんも興味津々。
続く一皿は、「アンコウのラグーソーストンナレッリ」(3,500円)。毎年、秋冬には必ずアンコウ料理をメニューに加えているそうです。

というのも、実は赤津さんが料理の世界に足を踏み入れることとなった最初のお店は、なんと神田の老舗アンコウ料理専門店。
その後イタリアンへ転身し、広尾の「ラ・ビスボッチャ」、恵比寿の「イル・ボッカローネ」などで修業を重ね、渋谷のワインバーでは店長を務めました。コロナ禍で店が閉まったことを機に独立し、2021年にサンチーロをオープン。つまり、アンコウ料理は赤津さんの原点なのです。
このラグーには、国産アンコウの身だけでなく、皮や内臓まで余すことなく使用。シチリアの島で食べたハーブたっぷりのパスタからインスピレーションを得て、淡泊な白身に香りと奥行きを与えています。太めに仕立てた手打ち麺がソースをしっかりと受け止め、噛みしめるほどに味わいが深まる絶品パスタです。

「うちもあん肝を出していますが、身や皮、内臓まで全部使うというのはなかなかないですよね」と御旅屋さん。料理はもちろん、赤津さんの仕事ぶりをカウンターごしに眺めるのも「刺激になる」とも感心しっぱなしです。
「華麗ですよね。ひとりで焼いて、煮て、また焼いて……。お客さんも多くてオーダーもたくさん入るのに、あのマルチタスクぶりは本当にすごいです」(御旅屋さん)

さて、お待ちかねのメイン料理は「北海道産牛フィレ肉の炭火焼き」(4,800円)。店内に炭火台を備えるサンチーロでは、炭火焼きは人気のメニュー。

付け合わせには、時季ごとのイタリア野菜を。この日はタルディーボを同じく炭火で焼き、ほのかな苦味と甘みを添えています。「白子のフリット」「アンコウのラグーソース トンナレッリ」「北海道産牛フィレ肉の炭火焼き」は、いずれもコース(9,000円)に組み込まれていますが、アラカルトでも注文可能です。

ワインはイタリア産を中心に、常時40〜50種ほどをラインナップ。グラスワインも1,400円から赤、白、スパークリングと複数用意され、料理に合わせてさまざま楽しめます。

毎週のように訪れる常連もいれば、ひとりでふらりと立ち寄る客もいるというサンチーロ。
「小さな店なので、お客様との距離も近い。お好みを伺いながら、できるところはアジャストしたいと思っています」と赤津さん。

旬の素材と、そして客一人ひとりと誠実に向き合う。その姿勢こそが、サンチーロという店の輪郭を形づくっているのです。
(取材・文◎安楽由紀子/撮影◎橋本真美)
●SHOP INFO
サンチーロ
住:東京都渋谷区広尾5-1-32 St Hiroo 2 1F
TEL:03-6721-9898
営:火〜金18:00〜23:30(L.O. 22:30)
土12:00〜15:00(L.O. 14:00)18:00〜23:30(L.O. 22:30)
休:日・月・不定休
https://www.instagram.com/sancirojp/






