
●奈良県天理市を舞台に初開催されたオープンドア・イベント「天理 倉の耕流祭(こうりゅうさい)」。中川政七商店による初の自社倉庫「NKG倉庫」の一般公開ツアーの様子をレポートします。
製造業、農業、食、文化、デザイン、流通、奈良県天理市に根づく多様な産業の現場が一斉に扉を開いたイベント「天理 倉の耕流祭」が、2025年11月7日(金)から9日(日)に開催されました。

今年はすでに終了していますが、来年度の開催がすでに決定しています。ぜひこの記事を参考にお出かけの予定を立ててみてくださいね。
天理市内28の企業が参加
このイベントのおすすめポイントは、天理市内28拠点を自由に巡ることができること。普段は立ち入ることのできない鍛冶工房や酒蔵、老舗食品メーカー、市長室まで公開されるなど、今までに例を見ない、地域の魅力を街全体で発表する一大イベントでした。

その中でも高い関心を集めたのが、『中川政七商店』による初の自社倉庫「NKG倉庫」の一般公開です。

工芸品やキッチン道具、食品に至る様々な商品を扱う『中川政七商店』の倉庫という日常では絶対に見ることができない場所を、工芸のテーマパークとして開放され、限定ツアーやマーケット、ワークショップ、キッチンカーの出展など子どもから大人まで楽しめる多彩な企画で賑わいました。

中川政七商店がつくった次世代型物流拠点を見学
『中川政七商店』と言うと、1716年創業の奈良県を代表する企業です。同社が掲げるビジョン「日本の工芸を元気にする!」を具現化する場として、2024年に完成したのが、NKG倉庫です。

これまで4ヶ所に散らばっていた物流拠点を一つに集約し、全国800社にも及ぶ工芸メーカーからの商品入庫手配も一本化しました。さらに、自社商品の物流機能を担うだけでなく、一般の物流システムでは対応が難しい多品種、小ロットの他社の工芸メーカーの物流も請け負っているのが、最大の特徴でもあります。
高さ7.5mを活かした圧倒的な収納力
1階の倉庫に入ってすぐに気が付くのは、天井の高さ。一般的な倉庫よりも高い7.5mの空間の中に、4段のラックを設置し、地上から天井までをフル活用しています。固定ラックのほか、棚が横方向へスライドする移動ラックを組み合わせることで、限られたスペースの中で効率的な収納と、作業のしやすさを実現しています。

長期在庫を1階に、店舗やECからの注文が入った商品については3階に設け、出荷や梱包等の作業を効率よく行える導線になっているので、最短距離で出荷作業が進むよう工夫されています。

この効率的なシステムを導入する背景には、輸送ドライバーの残業規制が始まった物流の2024年問題があります。国内の物流業界がこの問題に向き合う中、『中川政七商店』では、トラック予約システムや自動採寸、自動計量器の導入など、倉庫側が荷役業務の一部を担うことでドライバーの待機時間を50%削減という成果を生んでいます。

25坪の撮影スタジオも併設

個人的な見どころポイントとしては、『NKG倉庫』の2階にある古家具やキッチンを備えた約25坪の撮影スタジオです。ECサイトに掲載する商品写真や動画、SNS用のカットまで、さまざまな制作を担っています。
![撮影室[食楽web]](https://cdn.asagei.com/syokuraku/uploads/2025/11/20251128ngksouko11.jpg)
倉庫の中にあるので、「あの商品と組み合わせて撮ってみよう」など、アイディアを無限に実現できる、まさにクリエイティブな空間。同じ建物内で完結できるのが、とても画期的に感じました。
参加企業のワークショップやツアーなど見どころ満載

イベント期間中は、老舗『柿の葉ずし 平宗』の工場見学や柿の葉寿司作り体験、松田果樹園の柿畑の見学、天理大学附属図書館のアールデコ建築ツアー、宿「cofunia」の古墳客室の公開など、天理ならではの魅力に触れられるプログラム多数で、普段は出会えない天理の街の魅力が大きく開かれた3日間でした。

次回の「倉の耕流祭」では、奈良県天理市の風景と人、文化をぜひ体感してみてくださいね!
(撮影・文◎亀井亜衣子)





