
東京・目黒のランドマークのひとつ、目黒雅叙園が2025年10月に休館となります。そこで、目黒雅叙園と長年ゆかりのある和菓子店『風林堂』の今後が気になり、訪ねてみました。

『風林堂』があるのは、東急目黒線・西小山駅から徒歩8~9分ほど歩いた住宅街の片隅にあります。現在は二代目が受け継いでいますが、腕利きの和菓子職人だった先代が約半世紀前、雅叙園の和菓子部門で部長を務めていたそう。その後、外注体制の導入に伴う組織変更があり、目黒雅叙園専門に卸す和菓子店として『風林堂』ができました。現在も創業当時と変わらぬ自社工場で手作りを貫いている、真摯に和菓子と向き合う貴重なお店です。

お店の佇まいは懐かしさを感じるザ・昭和な和菓子屋ですが、一口いただくとその印象は一変します。素材を見極め、ひとつひとつ丁寧に仕上げられた“本気の和菓子”を味わえます。
和菓子なので季節ごとの菓子を味わうのも勿論おすすめですが、初めてなら定番のみたらしだんごと草だんごを是非。
![みたらしだんごと小豆餡の草だんご。どちらも午後3時過ぎには売り切れることが多い [食楽web]](https://cdn.asagei.com/syokuraku/uploads/2025/10/20251018-hurindo04.jpg)
みたらしだんごはこだわりの餡が絶品。一般的な片栗粉ではなく、北九州産の高級葛でとろみをつけたみたらし餡は滑らかな舌ざわりで、甘じょっぱさが口中にじんわり。ほんのり漂う芳醇な香りも垂涎もの。年間36万本も売れるというのも納得です。
草だんごは、山形産のヨモギを練り込み、北海道産の高級小豆「雅」を使った餡をまとっています。自社工場で長時間じっくりと炊き上げ、小豆のポテンシャルを徹底的に引き出した上質さ。雑味がなくふくよかでやさしい甘さです。
夏は水まんじゅう(165円)や水ようかん(162円)がおすすめ。見た目も美しく、ふっと気持ちが和らぐ、そんな優しさを秘めています。

こんな名店がまさか自宅のすぐ近くにあったとは! 灯台下暗しとは、まさにこのこと。これまで見過ごしていたのがちょっと悔しいです。
現店主の話によると、数年前から都内有名百貨店や目黒区内の高級スーパーにも置かれているとのこと。実際に目黒駅にある「ザ・ガーデン自由が丘」の和菓子コーナーを見に行ったところ、夕方には『風林堂』の商品だけが完売になるほど人気でした。

『風林堂』は目黒雅叙園の格式と伝統を支えてきた和菓子店として、目黒の文化の一端を担ってきた貴重な存在です。その品質のこだわりと、半世紀という長年にわたる地元・西小山や洗足エリアからの支持も熱く、目黒雅叙園休館後も地元に根ざした営業を続けていくそうです。
●SHOP INFO
風林堂
住:東京都目黒区原町2-1-14
営:9:00〜17:00、日曜日9:00〜17:00
休:火曜
●著者プロフィール
クワハラすえぞう
副業で間借りカレー店を6年運営していた普通の会社員(勤務先から承諾済み)。週末は新大久保「イスラム横丁」の徘徊率が高い。最近は梅干し作りと干し芋作りが趣味。フードアナリスト2級。https://x.com/currygenom