RAGUMAN本店|海南市

引き続きご紹介するのは、『RAGUMAN本店』。
和歌山県内には、『RAGUMAN』又は『らぐまん』の屋号に掲げる店舗が複数存在し、異彩を放っているが、今回採り上げるのは、その総本山。JR紀勢本線・冷水浦駅から徒歩15分程度、国道42号線沿いに佇む『RAGUMAN本店』だ。
同店の創業は、1993年(正確には、1993年に和歌山市内で創業し、2004年に現在の場所へと移転)。1993年と言えば、現在から遡ること30年以上も前。まだ“和歌山ラーメン”がご当地麺として脚光を浴び、人口に膾炙するに至る以前の話だ。
そんな時代において、創業者である寒川氏は、ウズベキスタンの麺料理「ラグマン」から着想を得、まったくの白地から新しいラーメンを創作。しかも同氏は、それまでラーメン職人の経験はなく、独学でこの「RAGUMAN」を生み出したというのだから、脱帽するほかない。
同店が提供するのは、基本メニューである「RAGUMAN」を筆頭に、「にんにくRAGUMAN」、「唐辛子RAGUMAN」、「イタリアンRAGUMAN」など、数十種類に及ぶ。その膨大な品揃えに、思わず目移りしてしまいそうになるが、今回、私は「にんにくRAGUMAN」をチョイス。

湯麺に中東のニュアンスを採り入れたオリジナリティ豊かな1杯。適度な匙加減へと調整された塩味が食欲を増進させ、溢れ返るニンニクの香気も、味覚中枢を心地良く刺激する。大量に搭載された香味野菜も風味豊か。口にする度に、身体中の細胞が浄化されてゆくような感覚を抱き、気が付けば、我を忘れて丼との対話に没頭していた。
国道42号線に忽然と姿を現す、ログハウス風の建物。予備知識がなければ、この建物でラーメンが提供されていることなど、想像すらできないほどだが、実は其処は、四半世紀以上の歴史を誇る、名物ラーメン「RAGUMAN」の総本山。
「知る人ぞ知る、もう一つの和歌山のご当地麺」とでも位置付けられるべき、「RAGUMAN」。訪問するのであれば、ぜひ、本店へと足を運んでほしい。
●SHOP INFO
RAGUMAN本店
住:和歌山県海南市冷水682
TEL:073-494-7700
営:18:00〜22:00(21:45LO)
休:月
井出系の老舗 『中華そば丸三』|和歌山市

ここまでの3軒は、ご当地麺“和歌山ラーメン”以外のラーメンを提供する優良店を採り上げたが、さすがに和歌山県の店舗紹介コラムで「和歌山ラーメン」に触れずに終わるわけにはいかない。
というわけで、ラストの1軒は、1954年創業の老舗『中華そば丸三』を紹介することとしたい。
和歌山市内には、「和歌山ラーメン」の実力店が星の数ほど存在する。その多くは、JR和歌山駅と南海和歌山市駅の周辺に集中するが、そんな中で、ともすれば見落とされがちなのが、両駅から少し離れた場所に佇む本格派の存在。『丸三』は、まさにその代表格だ。
同店は、1954年に創業した和歌山市屈指の老舗。屋号に「丸」を付しているので、“車庫前系”だと思われがちだが、さにあらず。1953年に創業した『井出商店』の親族が営む、れっきとした“井出系”の店舗だ。
店舗の場所は、JR紀勢本線・紀三井寺駅から徒歩20分程度。和歌山市の玄関口・JR和歌山駅からも電車でわずか6分と、地方の老舗としてはアクセスに恵まれている。店の周辺には景勝地「和歌の浦」もあり、観光の途中に立ち寄るには絶好のロケーションだと言えるだろう。
同店が提供する麺メニューは、「中華そば」と「チャーシューメン」の2本立て。徹底的に絞り込まれたメニュー構成から、味に対する絶対の自信がほの見える。加えて、同店では、「和歌山ラーメン」を語る上で欠かせない名物サイドメニュー「早なれ寿司(サバの押し寿司)」も提供しているので、未体験であれば、ぜひ召し上がっていただきたい。

注文してから、商品が提供されるまでの所要時間は約5分。丼が供されると、まず目を引くのは、美しい褐色に輝くスープの色合いだ。宙を舞う芳香が食欲を掻き立て、口を付ける前から只者ではない気配を放つ。
そんな直感は、スープをすすり上げた瞬間、確信へと変わる。喉奥でグイッと伸び上がる芳醇なカエシ、すすればすするほど右肩上がりに深まりゆく味わいに、思わず感嘆の声が漏れ出してしまう。嚥下した後、心地良い余韻を刻む「塩味」も、同店のスープの特筆すべき「強み」だ。
「レンゲを持つ手が止められない味わい」とは、同店の「中華そば」のような1杯を指すのだろう。「和歌山ラーメン」の歴史を背負いながら、現在においてもなお、最前線で愛され続ける『丸三』。万難を排して足を運んでもらいたい。必ずや、幸福な時間が約束されることだろう。
●SHOP INFO
中華そば丸三
住:和歌山県和歌山市塩屋6-2-88
TEL:073-444-1971
営:11:00〜20:00
休:日・祝
32席(カウンター4、テーブル22、座敷6)
●著者プロフィール
田中一明
フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店開拓・知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンをエリアを問わず実食。47都道府県のラーメン店を制覇し、現在は各市町村に根付く優良店を精力的に発掘中。