【和歌山グルメ】ラーメン官僚が激推しする、和歌山県の本当においしいラーメン店

麺匠 中うえ 橋本店|橋本市

 続いてご紹介するのは、『麺匠 中うえ』。

『夢風』と並び、「紀北」のラーメンシーンを席巻する「新潮流」の代名詞的存在として知られる。オープンは2019年7月1日。店主・中上氏が地元・橋本市へ帰郷して開業した一軒だ。

 ロケーションは、JR和歌山線・隅田駅から徒歩15分程度。控えめな看板を掲げた、派手さとは無縁な外観は、一見しただけでは変哲のない町中の店舗と見紛うほどだが、その実像は「記帳してから1、2時間待つのが当たり前」という、近畿六県においても有数の人気を誇る実力店。

 店前に客の姿があまり見当たらないのは、皆、車内で待機しているか、記帳後に他の場所へ出かけているため。私が訪問した時も、店の前は閑散としていたが、記帳状況を確認すると、実際は28人待ち。13時を少し過ぎた時点で、完売終了直前という盛況ぶりだった。

 さて、同店が提供するレギュラー麺メニューは、「鶏醤油そば」、「魚貝塩そば」、「豚骨醤油そば」、「淡麗つけ麺」、「濃厚つけ麺」など多種多様。いずれの品もハイレベルで、各々根強い人気を誇る。

 特に、魚貝出汁に塩ダレを合わせた「魚貝塩そば」は、県内で同系統の味を出す店舗が少ないこともあり、実食価値が極めて高い一品だ。

「魚貝塩そば」
「魚貝塩そば」

 アサリとハマグリが紡ぐ芳醇なうま味が、「魚貝塩そば」における不動の主役。貝を支える節と伊吹イリコの滋味も、味に深みと奥行きをもたらし、実食経験豊富なラーメンマニアも感嘆するほど重層的な味わいを生んでいる。

 塩ダレの主張を抑え、魚介と鶏の風味の引き立て役を担わせるギミックも、中上店主の長年にわたる研鑽が導き出した最適解。いったん口を付けたら最後、レンゲを持つ手が止められなくなること必至だ。

 スープに合わせる麺も、国産小麦の香気が爽やかにそよぐ自家製。モチッと存在感のある食感、なめらかなすすり心地、官能的な喉越しを兼ね備え、スープとの相性も頗る良好。トッピングのチャーシューも、豚バラ・低温調理・鶏の三種を揃え、食味に彩りを添える。

 ここまで趣向を凝らした1杯が、たかだか900円で味わえるのも驚きだ。信じがたい話だが、このコストパフォーマンスの高さは、同店が、県郊外の橋本市に所在するこそ、なし得た芸当だろう。提供された瞬間から、完食が約束された珠玉の名杯だ。

●SHOP INFO
麺匠 中うえ

住:和歌山県橋本市隅田町垂井49-2
TEL:0736-33-0122
営:11:00〜14:00(食材なくなり次第終了)
休:月・日・祝