麺屋 夢風|紀の川市

最初にご紹介するのは、2024年1月11日、紀の川市にオープンした『麺屋 夢風(めんやむふう)』。
ロケーションは、JR和歌山線・名手駅から徒歩5分程度(約350m)。国道24号(大和街道)沿いにある。店のそばにたどり着くと、同店が繰り出す1杯を待ち侘びる長蛇の列が視界へと飛び込んでくる。
この行列が、これといった目印が存在しない『夢風』のランドマークとして機能しているほど。私が同店を訪れた時も、その日の営業が始まる前の段階で、すでに15名規模の大行列が発生。人気の高さを雄弁に物語っていた。

営業時間は、木曜から日曜までの10時半~13時半までの3時間。木曜に限り17時~19時までの夜営業も行うが、営業時間は相対的に短く、そのハードルの高さは、まるで食べ手に試練を課すかのよう。にもかかわらず、訪問客が引きも切らないのは、ひとえに『夢風』の実力の高さが広く認知されているからだ。
同店を切り盛りする店主・中村氏は、大阪・高槻で、一大ブランドである『きんせい』グループを作り育て、関西ラーメン界の地図を塗り替えたレジェンド級ラーメン職人。そんな同氏が、満を持して地元・和歌山へと戻り、開業した個人店が『麺屋 夢風』。その事実だけでも注目に値するが、同店の真の価値は、丼の中身にこそ宿る。

現在、同店が提供するレギュラー麺メニューは、「内モンゴル塩らぁめん」、「木桶醤油らぁめん」に加え、数量限定の「がごめ昆布水のつけめん」の計3種類。特に、メニューリスト筆頭を飾る「内モンゴル塩らぁめん」は、同店の真価を知るうえで避けては通れない1杯だ。
注文から数分。恭しく眼前に供された「内モンゴル塩らぁめん」は、黄金色に光り輝くスープの色合いや、スープを介してほの見える麺の佇まいから、瞬時に「これは一流だ」と直感できる面構え。湯気に乗って鼻腔を突き抜ける香りは果てしなく芳醇で、撮影の時間さえ惜しまれるほど。
スープを一気にすすり上げれば、渾然一体と化した魚介と地鶏がコク深い塩ダレを大胆に巻き込み、うま味の稜線を一筆書きで描き切る。そのうま味の質の高さに、魅了されない者は存在しないだろう。滑らかに喉奥へと落ちていく麺も、しなやかな弾力を孕み、触覚を心地良く刺激。夢中になって丼と対峙するうちに、気が付けば丼が空っぽになっていた。
和歌山県と言えば、豚骨醤油ベースの「和歌山ラーメン」。そんな固定観念を一笑に付する、全国クラスの「淡麗塩」。『夢風』を訪れずして、和歌山ラーメン界の「今」は語れないだろう。