
●住んでみないとわからない、住んでいても意外と気がつかない商店街の魅⼒を、⼈、⾷、物語を通じて伝えていく連載です。
もともと多摩川沿いの宿場町として発展してきた二子新地周辺、川崎市高津区エリアには、大山街道ふるさと館をはじめ、岡本太郎の母・岡本かの子ゆかりの地など文化的スポットが点在しており、歴史と芸術が交錯する面影は、街歩きにちょっとしたワクワクを添えてくれます。
老舗がある一方で、クラフトビールや音楽カルチャーを取り入れたバーなど、新しい店舗も続々登場しているのが近年のトレンドとなっています。
古くからの人情と新しい感性が程よく溶け合い、肩肘張らずに“街の空気”を楽しめるのが二子新地の魅力です。
そんな二子新地を、二子大通り商和会会長、二子新地グルメの会実行委員会・高井英彦さんにナビゲートしていただき、さらなる魅力を発見していきます。
「いらっしゃい」よりも「おかえりなさい」が似合う街

二子新地をこよなく愛し、3店舗のお店を営みながら地域活動の先頭に立つ溢れる漢・高井会長は、商店街を歩きながら、お店の人や常連客に声をかけることを心がけていると言います。そんな姿からも、この街が“人と人とが顔を合わせ、声をかけ合う”空気で満ちていることが伝わってきます。
「”いらっしゃい”ではなく”おかえりなさい”が似合う街だと思うんです」と高井会長は穏やかに笑います。
二子新地は訪れる度に顔なじみが増え、より親密な関係が築かれて自然と「ただいま」と言いたくなる雰囲気の街なのです。
人を“つなぐ”商店街

「ここでは、モノを買う以上に“誰かに会いに行く”感じが強いんですよ」とも語る高井会長。
チェーン店が少なく、個人商店が多い二子新地。立ち寄る店ごとに店主の顔がはっきり見えるからこそ、ご近所さんを訪ねるような感覚で通い、気がつけばお店同士のネットワークも深まっていく。いわゆる“サードプレイス”になれる器がそろっているのがこの商店街の強みの一つ。まるでイタリアのバールで人々が立ち寄り、会話を交わし、また移動して別の店に顔を出すような。これほど“はしご”や“はしご先の紹介”が似合う街も珍しいかもしれません。