大トロ、中トロ、赤身の食べ比べ定食

『あおい』は、和食歴30年のキャリアを持つご主人が一人で切り盛りするお店です。夜は完全予約制で、季節の素材を用いた鮮魚と野菜を中心としたコース料理で楽しめます。
そしてお昼は、4つの種類(画像参照)があり、旬の焼き魚定食や、刺身定食、丼ものなどもありますが、前述したように7〜8割の人が「生本まぐろ」(2000円)の定食を食べているんです。

まず、お店での注文方法を紹介しましょう。
入店したら、厨房との境になっているカウンターまで進み、先にメニューを注文してお会計します。するとご主人からサイコロ状の番号札を渡されます。それを持って、空いている席に座り、番号を呼ばれるまで待機。なお、ご主人のワンオペなので、お冷ややお茶などは専用スペースでセルフサービスで注ぎます。

自分の番号札が呼ばれたら、カウンターに御膳を取りに行くわけですが、このとき、きっとみなさん興奮すると思います。その「本生まぐろ」定食を見ると、お皿にのった“生本マグロ”の美しい天然の色合いとボリューム感に、思わず心が高揚し、体温が上がって、自分の顔もマグロのように赤らむ感じがするハズです。

赤身、中トロ、大トロは、どれも分厚くカットされていて、新鮮さのあまりキラキラ輝いています。紅色、ピンク色、深紅。マグロの部位によって異なる美しい色を愛でたら、いよいよ実食です。
口に入れた時の食感、甘み、旨み、とろけ具合、部位ごとに全部違います。しかも同じ中トロでも包丁の入れ方が異なり、最も美味しく食べられるようなカットしてあります。どれ1つとっても同じ食感でもなく、同じ味でもない。1つ1つが味わい深く、マグロの食べ比べをしている気分です。

マグロの美味しさだけではありません。この定食が素晴らしい理由は、小鉢に入った副菜の美味しさにもあります。茄子の煮浸しやだし巻き玉子、小松菜の胡麻和え、きゅうりのたたきなど、どれも 新宿丁寧な味わいで、ご主人の腕の良さに感動するんです。
そして、私の大好きな白飯。この美味しさも尋常ではありません。ツヤツヤとしてお米の持つ旨みと甘みをしっかり感じられます。嬉しいのは、ごはんのおかわりが自由なことです。セルフサービスの場所にお茶碗を持参しておかわりをします。女性も含むお客さんのほとんどが、ご飯をおかわりしているのを目にします。それだけ、この定食が美味しいということの証ではないでしょうか。

というわけで、雨が降っていてもどしゃ降りでも、並んで食べたくなる『あおい』のお昼ご飯でした。食べれば心が晴れる、そんな「生本マグロ」定食、ぜひ皆さんも食べてみてください。
(撮影・文◎土原亜子)
●著者プロフィール
荒川 治
東京都内在住のタクシー運転手。B級グルメ好きが高じて、現職に就き、お客さんを乗車させつつ、美味い店探しで車を回している。中年になってメタボ率300%だが、「死神に肩をたたかれても、美味いものを喰らって笑顔で死んでやる」が信条。