圧倒的時間が作り出す『たこ梅』のおでん

カウンターに座って何を食べようかと店内を見渡してみると、懐かしい木札メニューのほかに、ポップなメニュー表もあって思ったよりグッとリーズナブル。
ちなみに、『たこ梅』の代名詞とも言えるメニューが「鯨」。鯨と言えば、鯨ベーコンや大和煮、鯨カツ(ゲイカツ)などが有名ですが、おでんで鯨といえば鯨の舌である「さえずり(R)」と皮下脂肪である「ころ」。
ということで、「鯨」を中心におでんを見繕ってもらいました。

「さえずり(R)」は牛タンのような食感を想像していましたが、趣はかなり別。モニュモニュと噛み切れない食感で、中から旨味があふれる様子は内臓系のホルモンにやや近い感じ。

この鯨の舌をお客さんが噛み続けていた際の音が“小鳥がさえずるよう”だという理由で「さえずり(R)」と名付けたのは、初代店主とのこと。歴史の深さと昔の人のネーミングセンスに脱帽です。
また鯨の皮下脂肪である「ころ」はトロ~ッとした脂の旨味と、鯨の皮のゴワッとした食感が組み合わさった食べたことのない味わいです。
下茹で3~4時間、おでん鍋で2時間煮込んだ「大根」は一切の雑味なし。4日も仕込みに時間をかけた「こんにゃく」も絶品で、じっくりと時間をかけて丁寧に作られているのがよくわかります。
ちなみにおでんの出汁は創業以来、毎日濾しながら継ぎ足し続けているそうです。

サイドメニューの「たこ甘露煮」も有名。おでんとは別の鍋で煮込み、柔らか過ぎずムッチリとした歯ごたえと旨味を感じます。『たこ梅』に来たら、鯨とたこの甘露煮はマストですね。
しみじみとおでんを食べていると、欲しくなるのはやっぱりお酒。『たこ梅』では、お酒の塩梅も最高です。

錫の容器(タンポ)でゆっくりとお燗を付けてくれます。お酒もおでんと相性のいいオリジナル。今ではなかなか見かけない錫の容器で飲むお酒は角がなく、まろやかで甘い飲み口。普段はビールという人でもぜひ味わってもらいたい日本酒です。